2020 Fiscal Year Research-status Report
Research of transient objects and dark matter with large-sized Cherenkov telescopes
Project/Area Number |
20KK0067
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野田 浩司 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (00816837)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 隆之 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (60713419)
高橋 光成 東京大学, 宇宙線研究所, 特任研究員 (60838960)
中森 健之 山形大学, 理学部, 教授 (30531876)
稲田 知大 東京大学, 宇宙線研究所, 特任研究員 (70884568)
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Project Period (FY) |
2020-10-27 – 2025-03-31
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Keywords | ガンマ線天文学 / ガンマ線バースト / 暗黒物質 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、CTA大口径望遠鏡1号基をより遠隔で制御可能にするためのいくつかの改善を行った。そこで追加で必要となったネットワークスイッチやケーブル類などを購入し、日本から観測地ラパルマに渡航した研究者やヨーロッパ本土から現地に赴いた技術者らとともに設置し、安定化を達成した。 2020年度には新型コロナウイルス流行の影響により、特に欧州への海外出張に強い制限があった。計画されていた中期出張をキャンセルせざるをえなかったため、該当予算を翌年度以降に繰り越した。この出張の目的は、CTAの大口径望遠鏡の2-4号基に搭載されるPMTカメラの焦点面モジュールの品質管理測定であり、本研究分担者らによってスペインにて2021年度中に行われる計画である。 このようなハードウェア作業がスムーズに進んだとは言い難い一方で、MAGIC望遠鏡を用いたガンマ線バースト天体解析とその論文化を進め、2020年度中に無事に出版を果たした。GRB 160821Bというショートバーストからの高エネルギーガンマ線放射について、検出の兆候を観測していたが、これを標準的な放射モデルで解釈することが難しいことを示した。本研究代表者の野田が主著者としてAstrophysical Journal誌から2021年2月に出版された。 CTA大口径望遠鏡のデータ解析については、暗黒物質のデータ解析の分担者が現職を離れることが決まったため、2020年度中に引き継ぎを開始した。他の分担者や東京大学宇宙線研究所に所属する大学院生がその内容を引き継ぐことになっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度には新型コロナウイルス流行の影響により、特に欧州への海外出張に強い制限があり、本研究計画を大幅に変更せざるを得なかった。CTA大口径望遠鏡2-4号基用の焦点面検出器モジュールの品質管理測定のためのスペイン中期出張が複数予定されていたが、測定が延期になったため出張をキャンセルした。測定は本研究分担者の齋藤・高橋らによって2021年度中に行われる計画であり、渡航が引き続き困難な場合は現地でのマンパワーに頼る可能性も出てきている。 また渡航が困難となったため、CTA大口径望遠鏡1号基をより遠隔で制御可能にするための改善を行った。昨年度前半、光学系調整に必要なPC類やそのネットワーク機器が不安定に動作していたため、現地の作業を依頼することが複数回あった。これを改善すべく、追加でネットワークスイッチやケーブル類を本研究予算で購入し、唯一日本から渡航した研究者が持参した。これをヨーロッパ本土から現地に赴いた技術者らとともに設置し、安定化を達成した。 このようにイレギュラーな問題によりハードウェア作業がままならない一方で、論文執筆に時間をさいた。MAGIC望遠鏡を用いたガンマ線バースト天体解析と論文化を進め、2020年度中に無事に出版した。既にGRB 160821Bというショートバーストから高エネルギーガンマ線放射の兆候を観測していたが、これを標準的な放射モデルで解釈することが難しいことを示した。ショートバーストは中性子星連星合体から生じているとされているが、まだ1例しか見つかっておらず謎が多い。今後のKAGRAなどによる重力波観測の本格化とあいまって非常にインパクトのある研究成果となった。本研究代表者の野田を主著者として、Astrophysical Journal誌から2021年2月に出版された。またCTA大口径望遠鏡の光学系の成果をSPIE国際会議において稲田が発表した。
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Strategy for Future Research Activity |
まずMAGIC望遠鏡によるガンマ線バーストなど突発天体の物理についてだが、本研究代表者の野田は、GRB 160821B観測の成果で国際会議ICRC 2021での発表を予定している(7月)。それ以外にもGRB 201216C, 201015Aなどの観測結果発表が予定されており、共著者としての貢献を行う。IFAEに赴いての研究項目としては、過去のMAGICによるGRB観測をまとめた論文がDr. Morettiらとの共同研究として進められていたが、彼女がIFAEを離れたため、今後の方針が不透明となっている。一方、Dr. Blanchとその大学院生のArteroは、重力波やニュートリノ観測からのアラートに対応する天体の観測を主題としており、彼らとの共同研究ができると考えている。MAGIC日本グループの一員である京大の大学院生とともに共同研究をする可能性がある。 CTA大口径望遠鏡については、「現在までの進捗状況」で述べたように、2021年度には2-4号基搭載用の焦点面検出器モジュールの品質管理測定が予定されており、複数の中期出張のための予算を計上している。また、CTA大口径望遠鏡1号基の光学系調整部分の安定化は進んだ一方で、2021年1-2月にあった大嵐の影響で、別の光学系ハードウェアに故障が生じてしまった。これを補修するための渡航を行い、追加補修を行いたいと考えている。 最後にCTA大口径望遠鏡のデータ解析だが、ガンマ線バースト天体の解析については、エキスパートとして研究してきた京大の大学院生が新たに東京大学宇宙線研に研究員として赴任する予定であり、大学院生との共同研究を継続する上で大きなプラスとなると考えている。暗黒物質のデータ解析は、分担する稲田が2021年度前半に現職を離れるため、本研究分担者である中森や大学院生に2020年度中に引き継ぎを開始しており、これを継続する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大の影響により海外渡航に強い制限があり、特に欧州への海外出張を断念せざるを得なかった。CTA大口径望遠鏡2-4号基用のPMTカメラの焦点面検出器モジュールの品質管理測定を目的とし、中期出張が複数予定されていたが、この測定自体が延期になったため、出張がキャンセルとなった。測定は本研究分担者の齋藤・高橋らによってスペインにて2021年度中に行われる計画であるため、そのまま費用を繰り越して計上した。
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Research Products
(10 results)