2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21000002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福島 正己 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (30241227)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
垣本 史雄 東京工業大学, 理工学研究科, 教授 (00092544)
荻尾 彰一 大阪市立大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (20242258)
佐川 宏行 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (80178590)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 宇宙線 / 極高エネルギー / 宇宙物理 / 基礎物理 / 国際共同実験 |
Research Abstract |
【観測】米国ユタ州に設置した空気シャワーアレイ(地表粒子検出器507台)、大気蛍光望遠鏡(3ステーション38台)、長距離無線ネットワーク、各種のデータ較正装置の運用を、日米韓露ベルギー5カ国の共同で行った。本年度は、望遠鏡による観測を約816時間、地表検出器による観測を約8590時間行った。【装置維持など】以下の作業を行った。 ① 大気蛍光望遠鏡の鏡洗浄、シャッター・空調機保守など、 ② 11月、地表検出器約260台の蓄電池交換、不調検出器1台を予備機と交換、水没検出器2台を回収、③ 8-10月、予備地表粒子検出器35台の組立と試験を行い、観測地に輸送。【グループ運営】国際共同研究の円滑な運営のため、① 隔月のTAデータ解析会議(TV・電話会議・スカイプによる)、② 年3回のTA全体会議(ユタ、京都、東京で各1回、うち東京の1回は拡張データ解析会議に変更)、③ 各月の TA executive meeting(電話会議)、④ 毎週の TA operation meeting (電話会議)を行った。日本グループとして、⑤ 毎週の研究打ち合わせ(電話会議ほか)と、⑥ 隔月定例打ち合わせ(柏・宇宙線研)を行った。【成果発表】① 6件の国際シンポジウム 、② 日本物理学会秋季大会(京都産業大学)、③ 第68回年次大会(広島大学)で、研究成果を発表した。【雇用】TAグループ全体で特任助教4名、特任研究員2名と秘書1名を雇用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的として、① 起源天体の同定、② GZK 限界の存否、③ 粒子成分の特定、を掲げて研究を推進している。 ① について、最高エネルギー領域(57EeV以上)で宇宙線の到来方向と、活動銀河核や宇宙の大規模構造との相関、宇宙線の自己相関などの解析を行ない、結果を公刊した。 現在までの観測事象数では、3シグマ以上の有意な相関は観測されていない。 ② について、宇宙線のエネルギースペクトルを解析し、宇宙線が背景放射との反応でつくる2つの典型的な構造 (a) ~5EeV の窪み(dip)と(b) ~50EeV の限界(cutoff)を確認した。これは、宇宙線が陽子である場合に理論的に計算されるスペクトル形状とエネルギー値(~5EeV, ~50EeV)に、よく一致している。このスペクトルを使って、GZK 限界なしの仮説を3.9シグマの有意度で否定する論文を投稿した。③ について、大気蛍光望遠鏡のステレオ観測で得たデータを解析し、~2EeV以上、~25EeV以下のエネルギー領域で、シャワー最大発達の深さXmax が、一次宇宙線が陽子である場合に期待される分布と一致することを確認した。
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Strategy for Future Research Activity |
データ解析については、① 観測事象数を増やす。② 新たな較正法を開発・実行する。③ データ解析方法を見直し改善する。 これらの努力により統計精度を高め、系統的誤差を縮小して、上記3項目の研究目的の達成をはかる。地表検出器からのデータについては、天頂角を45度以内から55度以内に広げた解析を行い、極高エネルギー領域での到来方向解析の統計精度をあげる。この際に、高天頂角でのデータとモンテカルロ(simulation)の比較を注意深く行い、エネルギー決定の誤差が大きくならないように留意する。電子ビームの空中射出によるエネルギー較正を行い、望遠鏡によるエネルギー決定の誤差を縮小する。これは、上記スペクトル構造を GZK 限界として理解する上で、特に重要である。従来のステレオ解析に加えて、ハイブリッド解析による Xmax 解析を行い、南半球のオージェ観測所との粒子成分の違いが、データ解析の手法の違いによるものではないことを確認する。また新たに加わるハイブリッドトリガーによる事象を使って、~0.3EeV 以上の比較的低エネルギー領域での粒子成分の解析を行い、宇宙線発生源が銀河系内から系外に変わることに伴う粒子成分の遷移(鉄核から陽子へ)を確認する。実験の運用については、現在の観測設備のエコ・省力・小経費化を目指して、遠隔集中運用への移行を進める。 近未来に実現する、0.03EeV への低エネルギー拡張計画 TALE と、地表アレイ領域を4倍に拡張して、最高エネルギー宇宙線の異方性の問題に決着をつける高エネルギー拡張計画 TAx4 の準備研究を進める。
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Research Products
(33 results)