Research Abstract |
本研究は,黄砂表面における多環芳香族炭化水素(PAH)誘導体の二次生成反応,とりわけ発がん性を有するニトロ化PAHや,呼吸器・循環器疾患やアレルギー疾患増悪作用を有するPAHキノン,内分泌かく乱作用を有する水酸化PAH等の非意図的生成に関わる反応について模擬大気実験系を用いた実験を行い,黄砂表面が関与する大気内PAH誘導体生成反応過程を明らかにするとともに,実大気観測によって,長距離輸送中の黄砂表面における有害PAH誘導体生成を検証し,更に,発がんや呼吸器系・循環器系・アレルギー性疾患,内分泌かく乱作用に関わる生体影響の実態を解明することを目的としている。平成21年度は,上記PAH誘導体のうちニトロ化PAHおよびPAHキノンをとりあげ,黄砂表面における二次生成の可能性について実験的に検討するとともに,実大気観測による検証も行った。その結果,PAHのニトロ化反応,光酸化反応およびオゾン酸化反応は,対照としたシリカやグラファイト粒子上に比べ黄砂粒子上で速く進行すること,黄砂イベント時には大気中のPAHキノン濃度が上昇する傾向が見られることなどを見出した。また,上記反応生成物に起因する生体影響を評価するためそれらのエストロゲン様およびアンドロゲン様作用を調べたところ,強い活性は観察されなかった。一方,ニトロ化反応による生成物の変異原活性は反応時間とともに上昇し,この活性の変化は生成物中のジニトロピレン濃度変化と対応することが明らかとなった。
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