2012 Fiscal Year Annual Research Report
高エネルギー電子・陽電子観測による暗黒物質・近傍加速源の探索
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21224006
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
鳥居 祥二 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90167536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 健二 芝浦工業大学, システム工学部, 教授 (90260984)
田村 忠久 神奈川大学, 工学部, 教授 (90271361)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | 宇宙線 / 近傍加速源 / 暗黒物質 / 粒子測定技術 / X線・γ線天文学 / 国際宇宙ステーション / 気球実験 / 国際共同研究 |
Research Abstract |
本研究の目的は、高エネルギー電子・陽電の観測により、宇宙線近傍加速源と暗黒物質の探索を実現することである。このため、気球実験(bCALET)の成果をもとに、2014年度にISS「きぼう」に打ち上げが承認されているCalorimetric Electron Telescope(CALET)の開発を実施している、CALET では高エネルギー電子・陽電子をTeV領域まで高精度観測する性能が要求されるため、シミュレーション計算に基づく装置性能の検証とともに、プロトタイプを用いた加速器ビーム実験による性能実証が不可欠である。 当該年度では、研究実施計画で述べた内容にしたがって、CALETのコンポネントである電荷測定器(CHD),イメージングカロリメータ(IMC)、及び全吸収型カロリメータ(TASC)について、熱構造モデル(STM)を用いた搭載装置の開発及び性能評価試験を行った。単体テストの後、各コンポネントをくみ上げて、搭載装置と同構造の装置(センサーは一部ダミー品)を作製し、CERN-SPSの電子・陽子ビーム実験を,国際研究チームで実施したている(9-10月).この試験では、読み出し回路も一部に搭載品のBBMを用いて、装置構造だけでなく電子回路も搭載品を模擬している。その結果、ほぼend-to-endに近い試験が実現しており、電子・陽子の観測性能がシミュレーションの期待値と一致することが確認できている。 さらに、2013年2月には、これまで実現の難しかったCERN-SPSによる重原子核の照射実験を実施し、高エネルギー領域でのCHDの電荷分解能(原子核選別性能)が、観測性能を達成していることを確認している。この結果、CALETの観測性能が地上検証が可能な範囲でほぼ確認されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は高エネルギー電子・陽電子(以下電子)の観測により宇宙線近傍加速源及び暗黒物質の探索を実施することである。このために、電子観測に最適化した検出器の開発により、気球及び国際宇宙ステーション(ISS)でTeV領域に及ぶ高エネルギー電子の観測を目的としている。 2009年度には、研究実施計画に従ってISS搭載用のCALET (CALorimetric Electron Telescope)の気球搭載用プロトタイプ2号機(bCALET-2)を開発・製作して、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の北海道大樹航空宇宙実験場において観測実験を行った。bCALET-2のデータ解析を終了して、観測装置とデータ解析を網羅した包括的な論文をJAXA研究開発報告(査読付)において発表している。そして、CALETプロトタイプとしての気球実験による性能検証に成功したと判断している。 気球実験の成果等により、CALETの提案が2011年度に正式にJAXAのプロジェクトとして承認を受けた。その結果、当初予定していた圧力気球を用いた海外での長時間気球実験(bCALET-3)よりも早くCALETの観測が実現できる見通しが得られた。このため、CALETにより研究目的をより迅速かつ確実に達成する事とした。そして、bCALET-3の技術開発を活用して、CALETの以下にのべる各コンポネントについて、要素技術開発及び機能試験モデル(BBM)の製作・性能試験及び熱構造モデル(STM)を用いたCERN-SPSによるビーム実験を実施した。現在,CALETは詳細設計フェーズを終了し、2014年度の打ち上げを目指して、搭載装置の製作を開始している。本研究の期間内に気球実験による研究目的の達成はできないが、ISSを利用したCALET計画により当初の研究目的が当初計画以上に達成できることが確実である。
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Strategy for Future Research Activity |
長時間気球実験に代わって国際宇宙ステーション搭載実験(CALET)により研究目的を達成すことになった事により、本研究の最終年度である2013年度は2011年以来実施しているCALETの開発を引き続き実施する。CALETはJAXAプロジェクトとして搭載装置の製作や打ち上げ・軌道上運用はJAXAの責任において実施されるが、メーカでは実施が困難な要素技術開発、コンポネント毎の性能実証試験、及びデータ解析は研究者側の責任分担となっている。鳥居は研究者側のCALETプロジェクト責任者(PI)であり、早大を中心とする国内研究機関と米伊の国際研究チーム(米国:NASA/GSFC, ルイジアナ大学、ワシントン大学など、イタリア:フローレンス大学、ピザ大学、シエナ大学、ローマ大学など)を統括して研究を遂行する。 2013年度は、搭載装置の製作が行われるため、本研究計画のメンバー(連携、協力を含む)は搭載装置の性能検証試験をJAXA/メーカと共同して実施する予定である。さらに、打ち上げ後の軌道上データ解析システムを早稲田大学で本格的に準備する必要があり、CALETデータ解析センターの構築と解析ソフトの開発を実施する。 研究期間が終了するまでには、CALETはシステムくみ上げが完了しており、打ち上げ(2014年7月頃予定)のための射場試験がの開始される予定である。したがって、この研究期間終了時までに観測データ解析による科学的成果を得ることはできないが、国際宇宙ステーションでの観測機会が確保され、期間内に観測装置の完成することにより、本研究計画が達成されるものと判断している。なお、打ち上げ後に必要な、国際研究チームによる大規模なデータ解析システムの構築のために、2014年度からは大型科研費等による研究の推進をはかり、本研究の最終目標である科学観測目的を計画以上に達成することを目指す。
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Research Products
(25 results)