2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21224010
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
白濱 圭也 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (70251486)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
本多 謙介 山口大学, 理工学研究科, 教授 (60334314)
柴山 義行 室蘭工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20327688)
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Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
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Keywords | 物性実験 / 低温物性 / ヘリウム / ナノサイエンス / 超流動 / 量子相転移 / 多孔体 |
Research Abstract |
本研究は、ヘリウム(4He) をナノサイズの空間に閉じこめて実現される「ナノスケール・ヘリウム」における新量子現象を系統的に明らかにし、その超流動性を自在に制御する方法を確立して超流動ジョセフソン素子を開発し、様々な科学技術への応用研究を展開していくものである。 平成24-5年度は以下の研究成果を得た。(1)ナノ多孔質ガラス中吸着4He薄膜における量子臨界点近傍の非超流動状態において観測されるねじれ振り子振動数の異常が、薄膜と多孔体の複合系の弾性率変化に起因することを発見した。(2)ナノ多孔質ガラス中加圧4Heにおいて発見した量子臨界由来の緩和時間異常を、別のナノ多孔質ガラス試料に対しても確認した。(3)ナノ多孔質ガラス中4Heの超流動性に対する静電場の効果を、平行平板コンデンサを装着したねじれ振り子により調べたが、振動子の安定性に問題があり観測できなかった。現在改善を試みている。(4)ポーラスアルミナ(PA)細孔アレイに対して金を蒸着し、細孔を10nm程度まで狭窄化することに成功した。(5)前述の金蒸着PAのナノ細孔中4Heの超流動特性を振動ワイヤー法により測定した。散逸が流速に非線形に依存する振る舞いを発見し、これを細孔中の量子乱流生成に起因すると解釈してデータ解析を進めている。(6)金蒸着PAを使用した超流動ジョセフソン装置を製作し、動作テストを行った。(7)ねじれ振り子によりグラフェンナノプレート上での4He結晶成長を調べ、単一の原子層内で4つの結晶構造間の不連続相転移を起こして成長することを発見した。(8)固体4Heの超流動的挙動に対する回転効果を調べ、超流動的成分が試料回転速度の逆数で周期的に振動する現象を発見した。この現象は超流動的成分が存在しないナノ多孔質ガラス中固体4Heにおいても弱いながら存在することがわかり、結晶中転位のダイナミクスとの関連を調べている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度後半にヘリウムの供給が停止し、実験が全くできない状況となったが、研究課題のいくつかを25年度に繰り越し、寒剤が不要な無冷媒冷凍装置を導入するなどの対処を行った。その結果、いくつかの研究テーマにおいて遅延や方法の変更が生じている以外は、順調に進展していると評価する。遅延しているテーマは超流動ジョセフソン効果の実験と超流動電場効果に関する実験である。前者は現在全力で取り組んでおり、後者はこれまでに行った実験での問題点を解明しているところである。一方、ナノ多孔体中吸着4He薄膜における異常硬化現象や、ナノグラフェン表面上結晶4He薄膜の不連続構造相転移の発見(論文発表済み)など、当初予期しなかった研究成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
ナノ多孔体中4He薄膜の硬化現象、ナノ多孔質ガラス中加圧4Heの量子臨界現象、ポーラスアルミナ中超流動4Heの量子乱流遷移については現在取りまとめと論文執筆を行っている。無冷媒ヘリウム3冷凍装置の導入により、ナノ多孔体中4He薄膜の硬化現象に関する追加実験と、超流動ジョセフソン効果の実験をスムースに進める。特に後者については、既存の希釈冷凍機も併用して、実験の成功に向けて全力で取り組んでいく。また、既存の実験装置に対しても、小型冷凍機を付置してヘリウム消費量を減らす工夫を行った。これを利用して、これまでに進めてきた電場効果の実験や、新たに製作した回転クライオスタットによるポーラスアルミナ細孔中4Heの超流動特性測定実験を進める。
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