2012 Fiscal Year Annual Research Report
痛みの分かる材料・構造の為の光相関領域法による光ファイバ神経網技術の機能進化
Project/Area Number |
21226011
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
保立 和夫 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (60126159)
|
Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
|
Keywords | 計測システム / 光ファイバセンサ / スマート材料・構造 / 分布型センシング / 防災危機・管理技術 |
Research Abstract |
[温度と歪の高精度・同時・分布センシング機能]では、偏波維持光ファイバにおける誘導ブリルアン散乱と同時発生する音響波ダイナミックグレーティング特性を測定して,温度と歪を同時・分離・分布測定する独自技術に関し、強度変調による空間分解能向上手法を提案・実証し、発表した。[分布量全体のダイナミックセンシング機能]では、BOCDA法のポンプ・プローブ光周波数差を固定して測定点を掃引し、本周波数差を変化させて本掃引を繰り返すことで全スペクトル分布を高速測定する技術を提案し、12回/秒の高速分布測定に成功した。 [BOCDR法の高性能化]では、被測定光ファイバからの自然ブリルアン散乱を分布測定する本技術において、信号光を位相変調した場合としない場合とで取得したスペクトルの差を取ることで、空間分解能と歪レンジを同時に向上できる新たな方法を提案・実証した。[簡素化BOCDA法]では、ポンプ光とプローブ光を時分割発生させるS-BOCDA系において、従来速度を2.5倍凌ぐ500サンプル/秒のランダムアクセスを達成した。S-BOCDA法による温度と歪の同時・分布測定技術では、単一半導体レーザからポンプ光、プローブ光、読み取り光を時分割発生させ、これらによりダイナミックグレーティングからのブラッグ反射を検出することにも成功した。 「長尺FBG歪センシングシステムの機能進化」では、コヒーレンス特性を合成する光源FM波形と相似な位相変調を参照光に加えることで測定位置を掃引する独自技術において、掃引線形性の向上に成功した。 「痛みの分かる材料・構造の機能進化の実証」では、BOCDA法に基づく温度と歪の同時・分離・分布測定系のプロトタイプモデルを企業と共同開発し、ビジネスジェット機体に光ファイバ神経網を設置して航空機構造ヘルスモニタリングの飛行実証試験を行って、温度と歪の同時・分離・高速測定に成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
温度と歪の同時・分離・分布計測での空間分解能制限要因の把握と「強度変調併用法」による解決法の提案・実証、全分布情報の高速測定用としての相関ピーク位置の自動掃引法の提案・実証、BOCDR法での「強度変調併用法」による高分解能化と歪測定ダイナミックレンジの拡大の両立、BOCDR法における位相変調付与による高分解能化と歪測定ダイナミックレンジの拡大の両立、簡素化BOCDA法での温度歪分離計測系の提案・実証、石英系光導波路であるPLC光導波路の導波路パラメータの分布型評価法の提案・実証、温度・歪分離・分布測定機能を有する試作機の実現、本試作機による航空機機体ヘルスモニタリングの実機による実証試験の実施など、当初計画を加速ないしは上回る成果が複数蓄積されている。 実際、平成24年度に進捗状況評価を受けた結果は[A]であり、「期待どおりに進展していると評価できる」とされたうえで、「一部については目標以上の成果が得られている」とのコメントも頂いている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本基盤研究Sにおいては、基本的に当初計画に沿って研究を推進するが、それを加速ないしは上回る提案・成果も得られており、それらも取り込んで研究を実行する。温度・歪の同時・分布測定システムでは、空間分解能向上の極限化を図るために、実験とシミュレーションを並走させる。全分布量高速測定技術では速度と歪感度の両立も図る。BOCDR法では空間分解能・歪ダイナミックレンジと距離レンジの拡大も実現する。最近提案・実証した信号光を位相変調した場合としない場合でのスペクトル形状の差を取ることで空間分解能と歪ダイナミックレンジを共に向上できる新技術につき、理論と実験を比較する。BOCDAにおけるランダムアクセスの速度向上時での測定レンジ拡大、簡素化BOCDAでの温度・歪同時測定系の機能進化も図る。長尺FBG多点化システムでは、位相変調での測定位置掃引法を導入して実証実験を行う。BOCDA系の試作機により、航空機ヘルスモニタリング等の痛みの分る材料・構造の機能実証をさらに進める。
|