2009 Fiscal Year Annual Research Report
ウエーハ等価薄膜太陽電池の直接製造を可能とするメゾプラズマ次世代シーメンス法開発
Project/Area Number |
21226017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
吉田 豊信 The University of Tokyo, 大学院・工学系研究科, 教授 (00111477)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神原 淳 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (80359661)
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Keywords | メゾプラズマ / シーメンス / シリコン / エピタキシー / 太陽電池 / 収率 |
Research Abstract |
現行の太陽電池は、トリクロロシランSiHC13(TCS)の熱CVDにより作製するポリシリコンを原料とした結晶系が大半を占める。このシーメンス法は11Nの高純度シリコン原料製造法として完成された技術ではあるが、平衡反応に依存しており原理的に反応収率は高々30%を越えず、かつインゴット材を1100℃程度に常に加熱するため高電力を必要とする。太陽電池向けポリシリコンとしては十分以上の純度を有することから、SOGグレードでありながら、高収率であり且つ高スループットを実現できる新たな原理コンセプトに基づくプロセス開発に期待が寄せられる。ここにメゾプラズマの特異な性質に着目すれば、高フラックス励起水素原子を利用することでTCS分解の不均化反応を促進させ、シーメンス法の速度論的限界克服の可能性が見えてくる。加えて、メゾプラズマCVDではプラズマと基板間の1mm程度の境界層での冷却過程の制御とプラズマ-表面相互作用によって薄膜構造及び結晶性制御を可能とし、広範囲温度での高速エピタキシャル成長が可能となる。以上を背景に、本研究では、メゾプラズマ環境の特長を最大限に利用し、TCSの励起水素原子還元促進と高効率化と、TCSを原料に直接ウエーハ等価品質のシリコン薄膜堆積を可能とするプロセスを統合させ、革新的な薄膜シリコン単結晶太陽電池の直接製造技術を提案し、次世代太陽電池プロセス基盤構築の一端を担う事を目的とする。 初年度となるH21年度はSiHC13(TCS)の原料ガス発生装置に必要となる要件を検討、設計、製造し、並びにこれに伴うガス供給系、塩化物対応真空ポンプ、副生成物トラップ、除害システム等、周辺装置を完備した。これを現有のメゾプラズマ反応装置(5MHz,40kW公称)に接続して、主装置設計試作に向けた予備実験としてTCSガスを用いたシリコン薄膜堆積を行った。SiH4ガスを利用した堆積実験において低温、高速エピタキシャル成長が確認されたプラズマ条件を基本に、TCS流量を主要な実験変数として堪積を行った。その結果、400℃と従来のTCSの熱CVD時に必要となる温度よりもかなり低温でも堆積可能であることが確認された。堆積速度は(C1原子のエッチングを反映した結果と考えられる)SiH4利用時の1/3程度の堆積速度ではあるが~30nm/secと比較的高速を実現しつつ、その電気特性もSiH4ガス利用時と同程度のホール移動度270cm2/Vsを有することが認められた。ただし、予期した通りSi収率は平衡状態を強く反映した20%弱に留まったことから、さらに高密度の原子状水素の発生・利用、並びに非平衡状態を実現できるプラズマ・堆積環境の実現が必要であることが確認された。
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