2012 Fiscal Year Annual Research Report
最新の生理生態情報に基づくウナギ大量種苗生産技術の実現
Project/Area Number |
21228005
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
塚本 勝巳 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (10090474)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大竹 二雄 東京大学, 大気海洋研究所, 教授 (20160525)
青山 潤 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (30343099)
金子 豊二 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (70221190)
井尻 成保 北海道大学, 水産科学研究科(研究院), 准教授 (90425421)
|
Project Period (FY) |
2009-05-11 – 2014-03-31
|
Keywords | ウナギ / 種苗生産 / 催熟 / レプトセファルス / 飼育技術 |
Research Abstract |
(1)成熟過程*卵巣遺伝子発現解析:良質卵の生産に必須の母性RNA組成を明らかにすることを目的として、人工の良質卵と悪質卵からそれぞれtotalRNAを抽出した。ラベルしたリボゾーマルRNAを用い、totalRNAからリボゾーマルRNAを95%除去することに成功した。除去後に得られた微量RNAからcDNAを合成・増幅し、NGS用ライブラリーを作製することができた。*産卵回遊行動:ポップアップタグデータの解析の結果、ニホンウナギは、昼は水温4-10 ℃(平均6.7±2.5 ℃),水深400-1000 m(平均611.5±135.1 m)の層に滞在し,夜間には浮上して,水温8-22 ℃(平均15.1±3.5 ℃),水深0-500 m(平均263.3±99.2 m)の層を回遊することがわかった.また,回遊中の遊泳速度は21.6~28.4 km/dayと推定された. (2)産卵過程*産卵生態:産卵場のスルガ海山南西海域で潜水艇しんかい6500とディープトウカメラによりウナギの産卵行動の観察を試みたところ、ニホンウナギの人工催熟魚の卵巣に誘引されて来たニホンウナギの雄の産卵親魚らしき映像を得た。*産卵行動: 人工催熟したニホンウナギの産卵行動を直径3mの円形水槽中で観察したところ、雄が雌を追尾、雄が雌の排泄孔や鰓蓋をつつくなどの既知の諸行動が観察された。この他雌の放卵と同時に雄が雌の至近距離で素早く回転する新規の行動も発見した。 (3)発育過程*浸透圧調節機構: 仔魚の消化管の機能発達過程を栄養輸送体のペプチド・トランスポーター1、およびイオン輸送タンパクのNa+, K+, 2Cl-共輸送体2bとNa+, Cl-共輸送体bの発現状態を観察したところ、孵化後1週間前後までに生存・成長に必須の栄養吸収と浸透圧調節の諸機能を獲得することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の中で導入した次世代シーケンサーによる包括的遺伝子解析作業は目覚ましい進展を見せている。また、野外における生態研究も順調に成果を挙げている。最終目標の大量生産技術の開発に向けて基礎知見の集積が著しい。
|
Strategy for Future Research Activity |
(1)成熟過程*卵巣遺伝子発現解析:NGSシーケンスで得られるリードは、シーケンスデータ解析システムを用いてコンティグにまとめてリードマッピングすることで、それぞれのコンティグに対するRNA蓄積量の定量評価を行う。これにより、良質卵に必要な母性RNA群を特定する。それらの測定系を用いて、様々な卵質レベルにある複数サンプルを解析し、良質卵に必須となる母性RNA組成のパターンを明らかにする。*産卵回遊行動:ポップアップタグデータの解析の結果明らかになった成熟条件を室内自然催熟実験に適用し、ホルモンを用いない自然催熟法を開発する。 (2)産卵過程*産卵生態:新規に浮遊式ウナギ産卵親魚誘引カメラシステム(UNA-COM)を開発し、現場テストする。これにより、天然の産卵行動を観察することで、人工産卵誘発技術の改良に資する。*産卵行動:UNA-COMシステムで得られた情報を用いて、人工産卵誘発実験を行う。良質卵入手のための諸条件(照度、水温、酸素濃度、産卵集団サイズなど)の最適化を図る。 (3)発育過程*飼育システムの開発: 従来の餌の改良と新規餌の開発を行い、仔魚の成長率・生残率の向上を図る。大量生産を実現するための仔魚の高密度飼育装置の開発を行う。
|
Research Products
(59 results)