2011 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属触媒合成を基盤とする有機イオウ・リン有用物質の高機能化と環境調和利用
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21229001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
山口 雅彦 東北大学, 薬学研究科(研究院), 教授 (30158117)
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Keywords | 遷移金属 / イオウ / リン / 触媒 / 有機合成 / 平衡制御 / 均一系 |
Research Abstract |
1.触媒高活性化と触媒的平衡反応制御 カルボニルアルファ位のチオ化に関して,活性化されていないケトンとアルデヒドの直接チオ化反応を開発した.酸性度の低いベンゾチアゾールなどのヘテロ環化合物のチオ化に成功した.ベンジルケトンの炭素-炭素結合を開裂再配列する反応を開発した.炭素-ヘテロ原子結合開裂を伴う反応でも進展が見られた.アセチレンに対する有機イオウ化合物の付加反応および有機イオウ化合物と有機リン化合物を相互変換する方法を開発した. 2.均一系平衡反応制御 均一溶液中で平衡を制御する方法を開発した.熱力学的に望ましくない平衡反応を望みの生成物に片寄らせるためには適切な共反応剤を添加することが有効であることを示した。酸フッ化物とチオエステルはロジウム触媒条件で平衡状態にあり,フッ素捕捉剤を添加するとチオエステルが生じ,イオウ捕捉剤を添加すると酸フッ化物を高収率で与えた。このような一連のアシル化反応系を開発した。また,平衡反応を移動させるために,共反応剤の構造によって制御する方法を開発した.さらに,平衡反応の性質をより理解するために,非共有結合生成をともなう二重ラセン形成反応の基質を探索した. 3.含イオウ・リンヘテロ環構築 遷移金属触媒反応を利用して新しいヘテロ環構造の効率的な構築法を開発し,ヘテロ環化合物の構造と化学反応性に関して検討を行った.塩基を用いないベンゾフラン環化法を確立した。また,ベンゾチアゾールなどのCH結合を直接メチルチオ化する反応を開発した.文部科学省事業に試料を提供した. 4.不均一系平衡反応制御 触媒的平衡反応の効率を向上させるために,不均一反応場を設計した.二成分系有機ゲル系の開発を行い,この系に特有の平衡的構造変化を見出した.また,固体表面における平衡反応を検討する目的で,金表面における二重ラセン形成反応を検討した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
均一系の平衡制御に関して,反応剤を工夫する方法によって,遷移金属触媒アシル化体系を構築することができたことが大きな成果である.これは本研究の核の一つであり,予想を超えた進展と考えている.加えて,いくつかの新しい物質変換法を開発した.
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Strategy for Future Research Activity |
新規な変換反応の開発と有用物質の合成研究を継続する.平衡制御に関して,不均一系反応場を構築することを強く推進する.これは生成物を反応系から取り除く最も本質的なアプローチであるが,これまで全く未開拓であった.ゲルと固体表面系の構築を検討する.
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