2011 Fiscal Year Annual Research Report
Wntシグナルによる心筋分化・心臓疾患発症機序の解明とそれに基づく治療法の開発
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21229010
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小室 一成 大阪大学, 医学系研究科, 教授 (30260483)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永井 敏雄 千葉大学, 医学研究院, 准教授 (00334194)
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Keywords | 心筋細胞分化 / iPS細胞 / 心不全 / Wnt / C1q |
Research Abstract |
1.Wnt, Wnt inhibitorを用いた未分化幹細胞からの高効率心筋分化誘導法を確立する。 昨年度まではフィーダー細胞上で培養しているヒトiPS細胞をコロニー状に剥離した後、浮遊培養を行なうことで心筋細胞を作製していたがその効率は非常に低く、再現性にも乏しかった。浮遊培養中のiPS細胞にWnt, Wnt inhibitorを順次作用させることで再現性高く心筋細胞に分化誘導することが可能になったが、やはり心筋細胞への分化効率は低かった。そこでLaflammeらによって報告されたBMP4,Activinを用いた接着培養による心筋分化誘導系(Nat.Biotechnol 2007)を用いたところ、再現性、効率Eともに高く心筋細胞に分化誘導することができたが、iPS細胞クローン間で分化効率に大きな違いが存存在した。 2.Wntシグナルの心臓疾患発症における役割を解明する。 Wntシグナルを抑制することで心筋梗塞後の梗塞範囲が縮小することが報告されており、Wntシグナルが心筋梗塞後の細胞死もしくはリモデリングに影響を与えている可能性が考えられた。我々は高齢マウス、そして様々な心不全モデルマウスの血液に、通常のマウスと比べて高いWntシグナル活性化能が存在することを見出した。血清によるWntシグナル活性化がWnt受容体Frzと結合することが報告されていることから、Frz-Fc融合タンパクを用いてFrz結合タンパクを沈降した後、SDS-PAGEで展開し、質量分析法を用いて心不全モデルマウス血中で増加するFrz結合タンパクとして古典的補体経路の第1因子であるC1qを同定した。細胞質beta-catenin量、Wntシグナルを評価するルシフェラーゼアッセイ、Wntシグナル標的遺伝子であるAxin2の発現といった従来のWntシグナル活性評価法を用いた結果、C1qは単独でWntシグナルを活性化することが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画を超え、ヒトiPS細胞で高効率かつ再現性の高い心筋分化誘導プロトコルを確立した。 当初の計画を超え、心不全の病態形成にWntシグナルが関与する可能性を発見し、Wntシグナル活性化のリガンドとして補体分子C1qを同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究内容は概ね当初の計画通り進行しており、平成24年度も(1)Wntシグナルが発生時期特異的に心筋細胞分化を制御する分子機構を明らかにする、(2)Wnt、Wnt inhibitorを用いた未分化幹細胞からの高効率心筋分化誘導法を確立する、(3)Wntシグナルの心臓疾患発症における役割を解明する、という3つのテーマを中心に引き続き検討を行う。
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