2010 Fiscal Year Annual Research Report
歴史情報学に基づく明治期社会モデルの研究-写真資料を用いた華族社会構造の解析-
Project/Area Number |
21240023
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
馬場 章 東京大学, 大学院・情報学環, 教授 (10208704)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉見 俊哉 東京大学, 大学院・情報学環, 教授 (40201040)
佐藤 健二 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 教授 (50162425)
五百籏頭 薫 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (40282537)
添野 勉 東京大学, 国立民族学博物館, 研究員 (20436512)
研谷 紀夫 東京大学, 大学院・情報学環, 特任助教 (00466830)
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Keywords | 歴史情報 / 歴史写真 / 華族 / 名刺判写真 / 集合写真 |
Research Abstract |
2009年度の研究成果を基に、2010年度は、名刺判写真の性質とその運用および活用に関する歴史的経緯の研究を行った。フランスで生まれた名刺判写真が日本社会においてはどのような形で写真師達の間で導入され、どのような形で華族社会に普及していったかについて、2010年度の調査により、その端緒を内田九一(1844~1875)に求めることが可能となった。さらに、2010年度の研究により、名刺判写真とともに各家に残されている集合写真が華族間の交流関係を計る上で重要な役割を果たしていることも解明された。当時の政治家、財界人、軍人などが写るそれらの集合写真には各家の当主が写るのは勿論、各家の当主が属する共同体との関係性、また人物同士の心情的繋がりが人物と人物との物理的位置関係から推測できる可能性があることが写真資料の調査によって明らかとなった。共同体内における人的交流の広がりは名刺判写真の種類と残存数の調査、および集合写真のメンバー構成と被写体である人物達の立ち位置の調査とを合わせることで、深層的な華族内の人間関係や華族共同体の有り様の解明が期待される。名刺判写真より一回り大きいサイズの「手札版写真」が華族社会の中では名刺判写真と同等の役割を果たしていることが判明したので、最終年度である2011年度は、これまでの調査研究成果を踏まえ、名刺判写真および手札版写真、集合写真の分析によって取得された歴史情報から、どのようなモデルが析出されるのかを明らかにすることに力点を置く。所蔵調査については国内外とも過去2年間の不足分を補う補足的な調査にとどめ、データベースやそれを活用した調査研究結果を通じた名刺判写真の生産・流通・消費・保存プロセスの分析と印刷媒体への接続、それによるパブリックな視覚的イメージの生産に注目し、それらが指し示す明治期の社会的高位に属する人々のコミュニケーションモデルや社会モデルの再構築を企図する。これらを通じ、写真資料という、従来歴史資料としての活用が不十分であった資料から読み解くことのできる「歴史情報」とそれに基づいた新たな歴史像と社会像を提示する。
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Research Products
(6 results)