2011 Fiscal Year Annual Research Report
多言語重層構造をなすインド文学史の先端的分析法と新記述
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21242009
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
水野 善文 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 教授 (80200020)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤井 守男 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 教授 (90143619)
萩田 博 東京外国語大学, 大学院・総合国際学研究院, 准教授 (80143618)
太田 信宏 東京外国語大学, アジアアフリカ言語文化研究所, 准教授 (40345319)
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Keywords | 多言語社会 / 言語横断的 / 文学伝承 / 説話 / 叙事詩 / 抒情詩 |
Research Abstract |
研究協力者を含めると30名をこえるメンバーからなる共同研究を円滑に遂行するため運営委員会を4回(6月ll日、9月9日、10月21日、12月9日)開催して全体の舵取りをはかる一方、研究会を2回(5月21日、11月4日)開いてメンバー相互の問題意識を再確認しつつ各人の作業の進捗をはかった。とりわけ、5月の研究会ではフィジーにおけるヒンディー文学の歴史と実態に関する若手研究者の報告をもらい、移民の文化伝統保持という新たな、まさにグローバルな視点からのインド文学史研究の必要性が指摘され有意義であった。また、適宜、隣接するテーマのプロジェクトと共同してメンバーによる研究報告の場を設けるなど、インドの古典から現代文学におよぶ諸言語文学研究の進展に様々なかたちで寄与した。 具体的な成果としては、当科研とほぼ同じ趣旨のもと遂行された研究であるS.Pollock編著のLiterary Culture in History : Reconstructions from South Asia(Berkeley,2003)に収められた17本の論考を当科研メンバーがそれぞれ専門とする言語の箇所を分担して英文による論評をまとめ、日本南アジア学会の英文ジャーナルに投稿した。この論評は2012年10月頃に刊行の見込みだが、当科研の最終目的である日本語による新たな「インド文学史」の記述に向けた確実な一歩となった。また、研究代表者が所属する東京外国語大学の南アジア言語文化研究会が発行する『南アジア言語文化』第6号(2012年3月刊行)に当科研メンバーからパンジャービー文学、ベンガル文学、ヒンディー文学等に関する研究成果が寄稿され公表されている。そのうちの一論考では、汎インド的に諸言語で親しまれてきた文学伝統である抒情詩のジャンル「12ヶ月詩(バーラーマーサー)」が扱われたが、これは当科研の共通トピックのひとつとして着目されるようになったものであり、当科研全体の今後の進展に大きく貢献する論考であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4つの共通テーマの柱(1 : せめぎあう文学伝統、2 : 文学の場、3 : 言語表現技法、4 : 文学と歴史的事件)に関しては具体化、絞込みという形での若干の変容があり時間を要してはいるが進捗している。一方、Pollock編著の諸論考に対する論評の英文による共同執筆は計画通り達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度4月20日開催の運営委員会で方針が確認されたとおり、1.ラーマ物語、2.語り(の場)、3.抒情詩「12ヶ月詩」、4.歴史事象と文学、5.映画などの表象文化、の各トピックに関して、言語横断的な動態を明らかにできることを目指して、協力体制をより強固にして研究の遂行をはかる。
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Research Products
(3 results)