Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
定藤 規弘 自然科学研究機構生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 教授 (00273003)
吉田 晴世 大阪教育大学, 教育学部, 教授 (40210710)
原田 康也 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (80189711)
田邊 宏樹 自然科学研究機構生理学研究所, 大脳皮質機能研究系, 助教 (20414021)
林 良子 神戸大学, 国際文化学研究科, 准教授 (20347785)
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Research Abstract |
平成23年度は,外国語運用能力の熟達化に伴う言語情報処理の自動化プロセスの解明を目的として,(1)語彙処理における音韻-意味の対連合学習の神経基盤の探求,(2)文理解における意味・形態統語情報のオンライン利用に関する心理言語学実験,(3)文産出における反復接触による統語表象の構築と統語産出の自動化の3点を主たる研究課題として掲げ,研究を遂行した。 (1)外国語未知語の模倣と反復による学習には,左腹側運動野(BA6)からブローカ野(BA44)が関与しており,反復回数の増加に伴って神経活動が低減することを明らかにした先行実験(吉田・横川ほか,2009)を受けて,音韻・意味の対連合学習の自動化プロセスを脳機能イメージングの手法を用いて探った。その結果,学習に伴う経時的変化を特異的に見せるのは左紡錘状回、左下前頭回、左中前頭回、右中後頭回、そして右小脳であることなどが明らかになった(Makitaeta1.,2011) (2)日本人英語学習者を対象に,文理解にプロセスにおける意味・形態統語情報のオンライン利用可能性とワーキングメモリ容量との関係について,眼球運動測定実験を行った結果,中程度の熟達度の学習者は,特定の形態統語形式に対する親密度が処理の自動化に大きく影響しており,また,ワーキングメモリ容量にかかわらず,統語的曖昧文の処理に動詞の形態統語情報を有効に利用するこどが困難であることが明らかとなった(鳴海,横川2011など)。また,言語情報処理のうち,統語処理がもっともコストがかかり,統語処理の非自動性を明らかにした(Nakanishi&Yokokawa, 2011など)。 (3)日本人英語学習者を対象に,文産出プロセスにおいて決定的な役割を果たす統語情報について,統語的プライミングの手法を用いて,接触効果による学習の可能性について検討した。その結果,接触回数が多いグループはプライミング効果が有意に高く,接触回数の累積効果も見られ,統語的プライミングの潜在学習(implicit learning)の可能性を示した(森下,横川2011など)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成23年度までに,語彙処理レベルの心理言語学,学習,神経心理学実験を,文理解・文産出・文章理解レベルの心理言語学,学習実験を並行して進めてきたために,平成24年度に予定していた研究計画をかなりの程度終えている。また,文理解レベルの神経科学実験,音声言語(文・文章を含む)処理の神経心理学実験にすでに着手しており,データの収集がかなり進んでいる状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
現在進行中の複数の実験課題により得られたデータを,外国語(第二言語)処理の自動化プロセスについて心理言語学,学習科学,神経基盤の解明の3つの角度からより詳細な検討を加え,学習による脳内処理の可変性についてさらなる実証研究を行う予定である。
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