2011 Fiscal Year Annual Research Report
・近世ヨーロッパにおけるコミュニケーションと紛争・秩
Project/Area Number |
21242025
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
服部 良久 京都大学, 文学研究科, 教授 (80122365)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山辺 規子 奈良女子大学, 文学部, 教授 (00174772)
朝治 啓三 関西大学, 文学部, 教授 (70151024)
根津 由喜夫 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (50202247)
櫻井 康人 東北学院大学, 文学部, 教授 (60382652)
渡邊 伸 京都府立大学, 文学部, 教授 (70202413)
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Keywords | ヨーロッパ / 中世 / 近世 / コミュニケーション / 紛争 / 儀礼 / メディア / 秩序 |
Research Abstract |
23年度には7月の研究会において、昨年度末に刊行した成果報告書の内容を検討しつつ、各分野の研究課題とその成果・問題点を確認し、23年度以後の研究計画を再編成した。全体的のポイントとして、コミュニケーションと秩序の相互関係の動態的把握、その重要な局面としての紛争と紛争解決に重点が置かれることに加え、メディアの多様性と状況に応じた機能的特質を明らかにすることを確認した。この点を踏まえて本年度は2度の国際研究集会を行った。7月24日の研究集会ではCh・ダートマンが、イタリア都市コムーネの規約文書とポデスタや市民の儀礼的行為を伴う遵守誓約が相互補完的関係を有したことを強調し、G・アイラルディはジェノヴァの擬制的な親族集団(アルベルゴ)が黒海から新大陸に至る対外的商業と海外定住において重要な役割を果たしたことを明らかにした。3人のゲストを招いた2012年3月24日の国際研究集会では、G・アルトホフが儀礼研究やperformative turnと呼ばれる新たなパラダイムが伝統的なドイツ国制史研究に多大の影響を与えたことを明らかにした。またG・キットリーニは、中世後期のイタリア都市(国家)における戦争の公的事柄(公戦)という認識、ドイツの貴族フェーデ(私戦)との相違を強調し、B・シュトルベルク=リリンガーは近世身分制議会が社会の全体構造と王国の一体性を表象し、儀礼的な手続きを重視したことを明らかにした。以上の研究集会や定例研究会の議論により、ヨーロッパ中・近世の政治的秩序の基軸をなすコミュニケーションにおいて、文書(規範)、言葉(オラリティ)、象徴(モノ)、パフォーマンスなど多様なメディアが複合的に用いられる状況やその機能(効果)等について一定の知見を得た。また北海(スカンジナヴィア・アイスランド)や地中海域における地域社会の秩序と、人・モノの移動のネットワークに基づくコミュニケーションとの密接な関係についても報告と討論を行い、共通認識を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
22年度末の成果報告書の内容の再検討により、各分野、各分担者の課題を相互に密接に関連させるべく、あらたな課題と計画の再編成を行うことができた。22年度には宮廷を中心とした政治的コミュニケーションにひとつの重点を置いたのに対し、23年度はより広く帝国、王国、地域、都市、ローカル・コミュニティの秩序とそれらの相互間のコミュニケーションをも対象とし、また儀礼、象徴、パフォーマンスといった多様なメディアの意義をも明らかにし得た。とりわけ年度末の国際研究集会は多数の参加者を得、独・伊の代表的な研究者を交えて有益な議論を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度の国際研究集会の成果を、他にも関連するテーマについての国内外の研究者の寄稿を得て、英文論集として刊行する。本年度の定例研究会では、コミュニケーションと政治・社会の秩序に関する歴史的な議論の幅を広げ、また深めるべく、日本史や東洋史の研究者をゲストとして招きたい。7月には数人の科研分担者が英国、リーズの中世史学会で紛争とコミュニケーションに関するセッションを行う予定である。また9月には英国の研究者を招聘して公開の研究集会を行う予定である。さらに25年度の日本西洋史学会大会において開催予定の、本科研によるシンポジウム、そして同じく25年9月にイタリアのトレントのブルーノ・ケスラー研究所との共催で行われるシンポジウムの準備を進める。本年度末の定例研究会では、以上の活動や準備作業の総括的議論を行う。
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Research Products
(9 results)