2012 Fiscal Year Annual Research Report
中・近世ヨーロッパにおけるコミュニケーションと紛争・秩序
Project/Area Number |
21242025
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
服部 良久 京都大学, 文学研究科, 教授 (80122365)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山辺 規子 奈良女子大学, その他部局等, 教授 (00174772)
田中 俊之 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (00303248)
轟木 敦子(中村敦子) 豊田工業高等専門学校, その他部局等, 准教授 (00413782)
渋谷 聡 島根大学, 法文学部, 教授 (30273915)
高田 京比子 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (40283668)
小林 功 立命館大学, 文学部, 准教授 (40313580)
根津 由喜夫 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (50202247)
小山 啓子 神戸大学, その他の研究科, 准教授 (60380698)
櫻井 康人 東北学院大学, 文学部, 教授 (60382652)
轟木 広太郎 ノートルダム清心女子大学, 文学部, 准教授 (60399061)
図師 宣忠 近畿大学, 文芸学部, 講師 (60515352)
朝治 啓三 関西大学, 文学部, 教授 (70151024)
渡邊 伸 京都府立大学, 文学部, 教授 (70202413)
藤井 真生 秀明大学, 人文社会・教育科学系, 准教授 (70531755)
西岡 健司 大手前大学, 公私立大学の部局等, 講師 (70580439)
青谷 秀紀 清泉女子大学, 文学部, 准教授 (80403210)
山田 雅彦 京都女子大学, 文学部, 教授 (90202382)
中堀 博司 宮崎大学, 教育文化学部, 准教授 (90423558)
皆川 卓 山梨大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (90456492)
高田 良太 駒澤大学, 文学部, 講師 (80632067)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ヨーロッパ / 中・近世 / コミュニケーション / 紛争 / 秩序 / 儀礼 / インタラクション / 国家 |
Research Abstract |
昨年度は「中・近世における政治的コミュニケーションの諸形態」を中心的課題として研究を進めた。7月には中村敦子、轟木広太郎、図師宣忠、青谷秀紀の4人の研究分担者が英国、リーズの国際中世史学会で“Communication and Conflict in England and France in the Central and Late Middle Ages“と題するセッションを設け、アングロ・ノルマン、西フランス、南フランス、ブルゴーニュにおける紛争とコミュニケーションに関する報告を行った。8月の2日間にわたる研究会では、出席者全員がローカル・コミュニティ、都市(国家)、領邦、王国、帝国、教会における紛争とその解決におけるインタラクティヴなコミュニケーションのプロセスを明らかにする研究成果、あるいはこれを解明する史料や論点を報告し、議論を行った。さらにそうした議論を踏まえ、25年度の西洋史学会大会で本科研チームが行うシンポジウムの報告予定者が予備報告を行い、シンポジウムにおける議論の可能性について協議した。8月下旬には課題分野の「アルプス地域研究」について共同研究を進めているイタリア、トレントのブルーノ・ケスラー研究所を服部良久と研究協力者の佐藤公美が訪問し、所員と25年度末に行う研究集会について打ち合わせを行った。25年1月には佐藤が同研究所での研究集会で、南ティロルの貴族に関する報告を行った。25年3月末の分担者がほぼ全員出席した研究会では、本科研の最終成果を総括する書物の内容について、個々人の課題が報告され議論した。また本年5月の西洋史学会シンポジウムのコーディネータ(服部)と報告予定者(朝治・松本・高田良太・藤井)が報告内容を発表し、全員で検討した。24年度は全体として、様々な単位、領域における政治的コミュニケーションと秩序のあり方に関する研究の成果が確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「コミュニケーション」というきわめて多義的で、かつ人間社会の存立に不可欠の相互行為を、中・近世ヨーロッパ社会の政治秩序、社会秩序の特質を明らかにする方法・視点として位置づけ、様々な政治体、社会、コミュニティに即して実証的な比較考察を進めた。その視点・方法とは政治体、社会の秩序を、紛争およびその収拾が繰り返される個人、集団間の濃密なインタラクションのプロセスとして明らかにしようとするものである。それは、国家や都市、農村社会、領域支配、教会の秩序を、法制や統治・行政組織の考察にとどまらず、このような日常・紛争・その収拾という動態的なプロセスとして捉え、そのプロセスにおける人々のインタラクションの実態、すなわち、そこで交わされる言説、価値・規範意識、またそうした相互交渉の生み出す新たな関係性、価値観、秩序といった点に着目して中・近世ヨーロッパの特徴的諸相を明らかにする試みでもある。このようなコミュニケーション・プロセスを、本研究では21名の研究分担者が、様々な地域を対象とし、国家統治(宮廷の移動と政治的コミュニケーション、統合)、覇権的権力と地域社会の間の紛争と秩序形成、都市社会のアイデンティティ形成と様々なシンボル、儀礼の意味、エスニシティの複合と多文化・多言語を特質とする社会における紛争・コミュニケーションと秩序、人間とモノの移動がもたらすコミュニケーションの機能(市場・十字軍・聖地巡礼)などを実証的に明らかにし、研究集会でその成果を報告、比較検討してきた。それによってヨーロッパ中・近世の東西南北諸地域における政治・社会(宗教・文化を含む)の多面的なコミュニケーション行為と秩序の相互関係が、なお局面的ではあれ、明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度である本年度は、これまでの研究成果のシンポジウム等による発表と、その結果の検討をふまえて成果の刊行を準備する。過去2度の国際研究集会の成果は、イタリアの出版社、ヴィエラより英文論集として拡充して出版する。本年5月の「日本西洋史学会第63回大会」(於京都大学)では、小シンポジウム「中世ヨーロッパにおける政治的コミュニケーションと秩序―境界地域から―」(コーディネーター:服部 良久)を開催し、「1259年パリ条約以後王子エドワードのボルドー政策」(朝治啓三)、「13世紀アイスランド社会とノルウェー王権 ―忠誠と反逆の狭間で―」(松本涼)、「13、14世紀クレタにおけるヴェネツィア支配とギリシア人―反乱時代の秩序形成」(高田良太)、「中世後期チェコにおける貴族共同体と外国人」(藤井真生)の4報告をたて、ヨーロッパ東西南北の境界(辺境)地域における紛争状況の分析を通じて、共存と統合の政治的コミュニケーション・プロセスを明らかにする。その結果をふまえて夏には、研究分担者、協力者全員が個人研究課題の成果を報告し、最終的成果刊行にむけて研究成果の相互批判的議論を行う。 一課題分野である「アルプス地域のコミュニケーションと紛争・秩序」については、その分担者4人がトレント大学(イタリア)のブルーノ・ケスラー研究所との共同研究に参加してきたが、26年3月(予定)に本科研との共催で同研究所で行われる研究集会に、この4人(服部・田中・皆川・佐藤)が出席して報告を行う。その打ち合わせのために報告者の一部が同研究所を訪問する。この研究集会の成果もイタリアで刊行の予定である。 また3月には本課題の最終成果の確認のため、分担者の原稿の読み合わせを行い、書物としての構成を確認する。これらの研究会、国際研究集会は常にその計画・日程と結果報告をウェッブサイトで公開し、研究会は自由に参加できるようにする。
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Research Products
(11 results)