2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21243018
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大森 裕浩 東京大学, 大学院・経済学研究科, 教授 (60251188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
古澄 英男 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (10261273)
日引 聡 国立環境研究所, 社会環境システム研究領域環境経済政策研究室, 室長 (30218739)
渡部 敏明 一橋大学, 経済研究所, 教授 (90254135)
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Keywords | ベイズ分析 / マルコフ連鎖モンテカルロ法 / 金融リスク / Stochastic Volatility / Realized Volatility / 信用リスク / 分位点回帰モデル |
Research Abstract |
大森は、Kunihama et al(2011)において、極値の時系列モデルであるMax-Stable過程について尤度計算および効率的なベイズ推定の方法を開発し、金融リスクの尺度として5分間株式収益率の日次最小値について高頻度データを用いて計量分析を行った。また石原・大森(2011)では、多変量確率的ボラティリティ変動モデルを東証業種別株価指数に適用し、因子構造を仮定せず・非対称性のある・裾の厚い誤差分布をもつモデルのあてはまりが良いことを示した。渡部は、Watanabe(2012)において日次収益率と実現ボラティリティを同時にモデル化する実現GARCHモデルがリスク評価で有用であることを示した。またNakajima et al.(2011)において、ボラティリティの変動も考慮した可変母数VARモデルを日本のマクロデータに応用し、母数・係数をすべて可変にしたモデルが最も当てはまりが良いことを示して、日銀の金融政策の効果の時期による違いを明らかにした。日引は、Miyawaki et al(2011)において階層ベイズモデルを用いて離散・連続選択モデルを我が国の水道需要のパネルデータに適用し、負の価格弾力性、正の所得弾力性を明らかし、家計の人数・部屋数と水道需要の関係に関する結果が個別効果のモデルによって異なることを示した。また岡川他(2011)では、洪水による浸水被害リスクを土地市場がどのように評価しているかを分析し、先行研究がリスクの過小推計をしていることを明らかにした。古澄は、動学パネルデータに対する分位点回帰モデルを考察対象とし、(1)説明変数にラグ付き従属変数を導入して動学的な分位点回帰モデルを構築、(2)説明変数と相関を持つ個体効果の導入、(3)混合モデルを利用したマルコフ連鎖モンテカルロ法による推定方法の開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大森は共同研究者とともに平成21年度より、関連するベイズ計量経済分析の研究成果について国内外の学会等において招待講演を含む62回の発表を行い、また査読つきの9論文(日本統計学会誌2、Japanese Economic Review 1、Computational Statistics & Data Analysis 3、Journal of Time Series Analysis 1、ほか洋書に所収2)を学術雑誌等に掲載している。渡部は国内外での多くの学会発表を行うとともに、資産価格の高頻度データを用いた実証分析やマクロ経済のDSGE(動学的・確率的一般均衡)モデル・可変係数VARモデルの応用研究について多くの研究成果を査読つきの6論文として掲載・発表している(日本統計学会誌 1,Quantitative Finance 1,Japanese Economic Review 1,Journal of the Japanese and International Economies 1,経済研究 2)。また日引は環境マネジメントシステムの有効性や住宅市場における化学物質排出のリスクについて査読つきの3論文(Japanese Economic Review 1、日本経済研究 1、Journal of Environmental Management 1)、古澄は動学パネルデータに対する分位点回帰モデルについてベイズ・アプローチを用いてモデルパラメータの効率的な推定方法を開発し査読つきの2論文(Journal of Regulatory Economics 1、Computational Statistics 1(印刷中))を発表している。研究分担者も研究発表を精力的に行っており、「研究の目的」である(1)「金融リスクの評価を行うモデルの開発」および(2)「経済行動のベイズ計量分析」の双方において、研究達成度は順調であり着実に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策として以下の2点について継続していく。 (1)「金融リスクの評価を行うモデルの開発」については、大森は確率的ボラティリティモデルのゆがみのある分布への拡張・多変量因子確率的ボラティリティモデル・動学的相関構造モデル・実現共分散行列との同時モデル化・極値時系列の新たなモデルの提案を、渡部は高頻度データを用いた実現GARCH・実現Stochastic Volatilityモデルなどの時系列モデルの開発を、古澄は分位点回帰モデルの拡張を継続して進めていく。 (2)「経済行動のベイズ計量分析」においては、大森は企業の市場への参入ゲームに基づくミクロ計量経済モデルの開発と応用・アメリカ歯科保険の購入行動の実証経済分析を、渡部はマクロ経済分析のための可変パラメータVARモデルの識別制約の研究を、日引は洪水による浸水被害リスクについて空間的自己相関を考慮したモデルへの拡張などの環境経済学における実証分析を中心に進める。
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Research Products
(41 results)