Research Abstract |
前年度に少数のAEセンサで開始したイズルウィーニ鉱山でのネットワークについて,センサを追加設置し,AEセンサ25点,3軸加速度計6点が100m程度の領域に3次元的に配置された,数十kHzという高周波まで感度をもつ地下でのネットワークとしては,過去に全く類例をみないものが完成した.地震活動は活発で,ドリリングノイズの多い朝7時から午後1時までの時間帯を除いても1日に20万個程度の微小破壊が記録され精度よく位置決定されている.ネットワーク周辺の領域では,マグニチュード-5以下の地震まで観測されている.1ヶ月程度のデータから,このような小さな破壊まで観測しても微小破壊はどこかしこにおこっているわけではなく,10-100m規模の平面的な薄いクラスターを成していることがわかった.クラスターのいくつかは既知の断層と一致している.これらの断層は,1億年以上前に運動を停止し変成・固結したものであるが,それでも微小破壊が非常に強く集中する.さらに,空間的に隣接したイベントのデータが高密度で得られているため,類似波形の相対比較による高度な地震学手法が適用できることが確認された.多くの地震が発生し被害を出す採掘前線のイベントに,これらの手法を適用し,ここでの微小破壊も数mから数十m規模の平面的な多数のクラスターに集中することがわかった.これらの面は付近の地質学的傾向と一致しないので,採掘によってこのような大きなクラックが作りだされているという仮説をたて検証を始めた. また,センサ設置用のボアホール掘削で取得されたコアにつて室内で破壊実験をおこない,その際に発生するAEを計測した.まだ実験数が少なく予察的な結果ではあるがAEは複数の薄い面に集中していた.試料は巨視的欠陥のないものであったが,鉱物の配向というレベルでの弱いフォリエーション組織はみとめられ,その角度は,AEが集中している面と一致していた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
同サイトでの他予算によるセンサのデータと統合的な処理をおこなうことによって,データの質が当初予定より圧倒的によくなり,解析が容易になり,信頼性も向上した.また,微小破壊活動自体,期待以上に活発で,様々な傾向を,あれこれ逡巡することなく,簡単に発見することができる.
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Strategy for Future Research Activity |
この観測網は,もう一度実現することはないかもしれないくらいの規模と質であり,欠測をなるべく少なく保って,大きなイベントに備える.一方で,大量のデータ・試料に対処するため,室内実験と解析の環境をより整備する必要がある.また,他予算による計画とあわせてこの鉱山とはかなり断層・応力状況の違う鉱山に現在敷設中のより小規模なネットワークの観測を開始し,比較研究を行う.
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