2010 Fiscal Year Annual Research Report
長期的餌資源制限がニホンジカの生活史特性へ及ぼすフィードバック効果の解明
Project/Area Number |
21248019
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
梶 光一 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 教授 (70436674)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 裕史 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所・生物多様性グループ, 主任研究員 (60399780)
宮木 雅美 酪農学園大学, 環境システム学部, 教授 (60442604)
鈴木 正嗣 岐阜大学, 応用生物科学部, 教授 (90216440)
吉田 剛司 酪農学園大学, 環境システム学部, 准教授 (00458134)
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Keywords | エゾシカ / 爆発的増加 / 個体群の崩壊 / 生活史特性 / 餌資源制限 / 個体群動態 / 個体群動態モデル / 人獣共通感染症 |
Research Abstract |
1. 個体数のモニタリング:個体群増加率は、2005年以降11.5%となり二度目の増加にあたる1986-2001年の7.8%よりも高い増加率を示している。 2. 餌の利用可能量と土地利用の年代的変化:夏期の森林における利用可能量(シカの採食高内の嗜好植物のバイオマス)は島内平均12.9kg/haで、不嗜好植物を含む生物体量の1.3%のみであった。夏の落葉量91.2kg/ha/月や年間落葉量2,260kg/haと比較しても極めて少なく、1994年の前回調査時から強い採食圧が継続している。GPS装着個体は周年落葉広葉樹を利用しており、落葉への依存が高いことが示唆された。 3. 落葉の評価:代替の餌として、落葉が1年を通して利用されていた。不嗜好植物のハンゴンソウは葉が枯れると採食され始めた。 4. 生活史特性:2009年と2010年に電波発信機を装着した成獣メス28頭のうち2年間で2頭の死亡(7.1%)が確認された。自然死亡個体の標本作製と既存標本のデータベースの作成を行った。 5. 抗体疫学的調査:洞爺湖中島にて捕獲した13個体の抹消血で紅班熱群リケッチアDNAの検出を試みたが陽性個体は確認されなかった。したがって平成22年度の研究では、「閉鎖系個体群においては個体レベルで病原体の集積が発生し、感染症の伝搬や流行における野生動物の役割が顕著に現れる可能性がある」との仮説を支持する情報は得られなかった。 6. 爆発的増加と崩壊の個体群動態モデルの構築:シカに複数のタイプがあり、それぞれの餌種の利用性が異なることを考慮した個体群動態モデルに、食性シフトの遅れやシカによる嗜好性が世代間で伝わることを課程することで、爆発的増加と崩壊を繰り返す個体数変動を再現することができた。
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Research Products
(14 results)