2011 Fiscal Year Annual Research Report
生体吸収性マグネシウム合金の生体内分解特性の解明と制御
Project/Area Number |
21300183
|
Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
山本 玲子 独立行政法人物質・材料研究機構, 生体機能材料ユニット, グループリーダー (20343882)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 良央 東北大学, 大学院・歯学研究科, 助教 (30302152)
向井 敏司 神戸大学, 大学院・工学研究科, 教授 (40254429)
|
Keywords | マグネシウム合金 / 生体内分解特性 / 生体適合性 / 組織制御 |
Research Abstract |
近年、生体必須元素の一つであるマグネシウムに注目し、その合金を医療用生体吸収性材料として適用する試みが行われている。しかしながら、工業用マグネシウム合金にはマグネシウム以外の金属元素が多量に添加されており、中には人体に対する影響が未知の元素も含まれるため、生体安全性が懸念される。そのため、主成分としてのマグネシウムに、生体安全性の高い金属元素を微量に添加し、さらに材料の微細組織を制御することにより、安全性が高く、かつ材料の強度や体内における分解速度を調整可能な合金を開発した。医療用生体吸収性マグネシウム合金の臨床応用を実現するためには、合金に対する生体反応を明らかにし、生体内における合金の分解速度を最適化する必要がある。 これまでに、マグネシウムの分解に伴い生成する水酸化物イオンにより、体液のpHが上昇すると、周囲の組織・細胞に悪影響を及ぼす可能性を明らかにした。そこで、生体内分解速度の早い純マグネシウムをモデル材として用い、初期分解速度の抑制による細胞適合性向上の検証を試みた。その結果、生体吸収性高分子材料の皮膜を表面に形成することにより、生体吸収性高分子の種類及び分子量を変えることにより培養1-7日間の分解速度を制御でき、それにより、試料上の細胞増殖が飛躍的に向上することを明らかにした。 一方、開発合金の細胞適合性は、必ずしも初期分解速度のみによらず、合金組成にも依存することが確認された。これは、合金の初期分解速度が大きいときは、培養液のpH上昇が細胞増殖抑制の主要因であるが、ある程度合金の初期分解速度が抑制され、pH上昇の影響が少ない場合には、合金組成の影響が現れるためと推測される。合金組成元素と細胞適合性の関係について、さらに検証を進める予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
開発合金について、小型動物埋入試験により、生体内において病的な組織反応等を引き起こさないことは確認済みである。合金の分解特性と生体反応の関係をより詳細に検討するため、in vitro試験を中心に、分解特性及び生体適合性評価を行っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
生体反応に影響を及ぼす合金側因子について、着実に解明が進んでいる。複相合金の場合は、母相と析出相との間の電位差が分解特性制御の面で最も重要な因子であり、析出相の種類と形状により分解特性が変化する。一方、単相合金については(不純物の影響を排除した場合)、異なる機構が働くと考えられ、詳細に解明する必要がある。また、マグネシウム合金の生体内分解特性評価については、生体内の緩衝条件(リン酸・炭酸)を考慮しなければならず、従来の生理食塩水・炭酸緩衝能を有さない無機塩溶液を用いることは相応しくない。その点を明示するデータを揃える予定である。
|