2011 Fiscal Year Annual Research Report
局所的筋運動による筋肥大効果転移のメカニズム:循環因子の探索
Project/Area Number |
21300235
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
石井 直方 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (20151326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中里 浩一 日本体育大学, 体育学部, 教授 (00307993)
越智 英輔 明治学院大学, 教養教育センター, 講師 (90468778)
禰屋 光男 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教 (30359640)
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Keywords | 運動・トレーニング / 筋肥大 / 効果転移 / 循環因子 / プオテオーム解析 / 培養筋細胞 / タンパク質合成 |
Research Abstract |
我々は、血流制限下での筋力トレーニング(「加圧トレーニング」)による筋肥大効果が、同じトレーニングを行っていない他の筋に転移することを見出した(Madarame,Ishii et al., Med. Sci, Sports Exerc. 40,258-263,2008)。この現象(「効果転移」)は、筋肥大を助長する何らかの循環性因子の存在を示唆する。本研究は、主に次の4つのサブテーマに沿って実験を行うことにより、この効果転移を引き起こす循環性因子の検索と同定を試み、運動に対する筋および全身の適応のメカニズムに新たな知見を加えることを目的とする:1)効果転移の一般性、2)循環性因子の探索・同定、3)循環性因子の産生部位、4)強制発現の効果。これらのサブテーマのうち、1)については、21年度の研究により、筋肥大効果の転移が、下肢筋から上肢筋へという特定の関係でのみ成り立つものではなく、下肢筋から体幹筋へも起こる現象であることを示したが、血流制限下でのトレーニングという特殊なトレーニングでのみ起こる現象であるかが確定的でなかった。22年度の研究から当効果転移は一般のトレーニングにおいても、特定の条件(運動の量および休息時間)が満たされれば生じる現象であることが判明した。2)については、下肢血流制限トレーニングの前後に採取した血清中のペプチドを二次元電気泳動およびショットガン解析(ラベルフリーおよびタグ法)の双方で検索し、複数の因子を候補として同定した。その結果、濃度の低下するものとしてsomatostatin、GDF-8、濃度の増加するものとして、I1-6、FGF-20、FGF-8、hepatocyte growth factor activator(HGFA)、IGF-1 binding protein complex、HSP-70などが同定された。3)濃度の増加するものにつき、動物モデルを用いた免疫染色により局在を調べたところ、筋組織で生産されることが示唆された。本年度は、血中の循環因子が、培養筋芽細胞の分化とタンパク質合成に及ぼす効果につき、L6培養細胞系を用いて検討した。その結果、腓腹筋に対して18日間のトレーニング刺激を与えたラットの血清を培養細胞に与えた場合、対照群のラット血清を与えた場合に比べて、筋分化因子であるmuogeninの発現が抑制され、筋タンパク質合成を活性化する因子であるリン酸化mTORおよびリン酸化rpS6の発現が増大し、筋タンパク質の合成を促す何らかの因子の量が増大していることが示唆された。
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