2011 Fiscal Year Annual Research Report
プラント・オパール中の炭素による生産遺構の年代測定法の確立
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21300330
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Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
宇田津 徹朗 宮崎大学, 農学部, 准教授 (00253807)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 俊夫 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 教授 (10135387)
田崎 博之 愛媛大学, 法文学部, 教授 (30155064)
外山 秀一 皇學館大学, 文学部, 教授 (50247756)
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Keywords | 生産遺構年代 / 年代測定 / プラント・オパール / 生産遺構立地 / AMS / 微量炭素 |
Research Abstract |
今年度は平成22年度までの研究成果を受け、「夾雑炭素の除去法の改善ならびに年代測定に必要な土壌重量の算定式の確立」、「生産遺構立地の分類とモデル化ならびに堆積層の層相分析」、「プラント・オパール中の炭素による年代測定精度の検討」について取組を行った。 以下にそれぞれの概要と成果をまとめる。 1.夾雑炭素の除去法の改善ならびに年代測定に必要な土壌重量の算定式の確立 夾雑炭素の分解の前処理に自動乳鉢によるプラント・オパールの粉砕工程を加えた新しい処理工程を確立した。また、土壌のプラント・オパール組成に応じた必要最低限の土壌重量の算定式を作成した。加えて、粘土の自動除去装置を作製導入し、抽出効率を低下させずに、土壌からのプラント・オパール抽出工程に要する実験者の作業時間を大幅に短縮することができ、抽出工程については、実用化の水準にほぼ到達することができた。 2.生産遺構立地の分類とモデル化の検討・堆積層の層相分析 昨年度に整理した調査遺跡リストから、丘陵地、扇状地の末端部、沖積低地等の立地および堆積環境、土壌の母材などに着目して、モデル化のkeyになる要素の特定ならびにそれらに基づいてモデル化対象とする遺跡と地域をほぼ特定する段階まで進めることができた。 3.プラント・オパール中の炭素による年代測定精度の検討 今年度は、土壌による違い、夾雑炭素の除去など、炭素抽出の前処理やプラント・オパール組成の違いによる年代測定結果への影響について調べ、測定精度について検討を行った。その結果、夾雑炭素の除去方法の違いが年代測定の結果(精度)に影響を与えること、ならびに方法による測定結果の違いについてもその一部を明らかにすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的である「プラント・オパール中の炭素を利用して生産遺構の年代測定を行う技術の確立」を構成する3つの要素「プラント・オパール抽出方法」、「プラント・オパールからの炭素抽出と年代測定」、「年代測定値の精度の検証」の内、前者の2点については今年度までにほぼ達成することができた。精度の検証については、最終年にも継続して実施する必要があるが、プラント・オパール中の炭素を取り出し年代測定を行う本研究の中核的な部分は3年目までに達成できており、おおむね順調に進展してきていると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の推進方策は、様々な遺跡土壌についての測定事例を増やし、年代測定値の精度検証(実用性の検討)を進める。また、来年度は最終年度であるため、4年間の研究成果であるプラント・オパールの抽出から年代測定までの一連の技術についてまとめたマニュアル(含む報告書)を作成する予定である。 なお、精度の検証においては、測定結果の妥当性という視点だけでなく、プラント・オパールの抽出ならびに炭素抽出の難しさから、世界的にも基礎データが非常に乏しいプラント・オパール中の炭素の給源という植物生理的な視点からの検討も行い、古環境や農耕史だけでなく広範な関係分野の基礎データとなるよう取り組みたい。
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Research Products
(6 results)