2009 Fiscal Year Annual Research Report
国際観測ネットワークによる南極底層水淡水化の量的把握と氷河融解の影響検証
Project/Area Number |
21310002
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
青木 茂 Hokkaido University, 低温科学研究所, 准教授 (80281583)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
深町 康 北海道大学, 低温科学研究所, 助教 (20250508)
|
Keywords | 海洋科学 / 極地 / 環境変動 / 南極底層水 / 酸素安定体 |
Research Abstract |
本研究は、酸素安定同位体比測定という新しい手法を標準化した国際共同海洋観測ネットワークによりオーストラリア・南極海盆における南極底層水のここ20年間の淡水化の全体像を把握し、人工衛星や数値実験の結果とも組み合わせてその原因を明らかにすることを目的としている。本年度は、まず質量分析計を継続的に運用する体制を構築し、アデリーランド沖の南極底層水源流域における海水サンプル等の酸素同位体比分析を行った。アデリーランド沖源流域にあたる東経140度でオーストラリアの観測によって取得されたサンプルの分析を実施し、良好な分析結果を得た。次いで、同海盆における流速場および水温・塩分変動場に関する解析を行った。渦解像数値実験の結果は、平均流量にして20×10^6m^3/s程度の海盆規模の低気圧性循環の存在を示し、底層では毎秒数センチメートル程度の流速場が得られた。これは、過去の一部の研究で得られている非常に強い循環像に修正を迫るものである。氷山や中層フロートの軌跡を解析して得られた漂流場はこの数値実験による流速場とよく対応することから、底層における流動場も一定の信頼に足るものと考えられる。また、1990年代のWHP観測と2000年代に実施した観測との比較から、アデリーランド沖源流域では底層水の低温・低塩化傾向が、東経110度やケルゲレン海台沖では高温・低塩化傾向がそれぞれ得られた。この変化の原因の一つの可能性として、底層水の母海水のひとつであるアデリー海谷における陸棚高密度水の変質が考えられる。陸棚水に対する氷床融解や海氷生産の時間的な変化による変質の可能性を調べるため、メルツ氷河に関する人工衛星画像を解析したところ、本年度中の2010年2月上旬にメルツ氷河の氷舌末端が分離し位置関係が大幅に変化する事態が起こった。このことは、ポリニアでの今後の海氷生産に影響を与える可能性を示している。
|
Research Products
(5 results)