2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21310121
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
篠田 雅人 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 教授 (30211957)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
黒崎 泰典 鳥取大学, 乾燥地研究センター, プロジェクト研究員 (40420202)
尾崎 孝宏 鹿児島大学, 法文学部, 准教授 (00315392)
大谷 眞二 鳥取大学, 乾燥地研究センター, 准教授 (10314577)
島田 章則 鳥取大学, 農学部, 教授 (20216055)
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Keywords | 砂塵嵐 / 気象災害 / リスク評価 / 脆弱性評価 / モンゴル |
Research Abstract |
モンゴルの砂塵嵐の影響を、気象災害のリスク=大気現象の規模x遊牧社会の脆弱性(社会経済・保健医学・獣医学要因)という新しい枠組みでとらえ、気象解析により砂塵嵐の規模を評価するとともに、牧民の社会経済調査、健康調査、家畜の病理学調査により遊牧社会の脆弱性評価を行うことで、砂塵嵐が引き起こした影響を解明する。とくに、同じ規模の砂塵嵐が通過した地域でもその影響が異なる場合、遊牧社会の脆弱性に差異があるかを検討する。 2008年5月終わりには、雪をともなった砂塵嵐が観測史上最大規模の52人の死者と約28万の家畜死をもたらし、大きな社会経済問題となった。保健医学調査では、前年度に実施した現地調査の詳細な解析により、砂塵嵐が眼症状の悪化などに直接的に影響していることが判明した。さらに、環境因子との関連性を含めた健康調査を新たに行った結果、砂塵嵐に伴う気圧や湿度の変化も呼吸器などの症状に影響を及ぼしていることがわかった。また、災害をもたらすような砂塵嵐では、家畜などの経済的な損失により住民の長期にわたる健康関連のquality of lifeの低下が示された。 獣医病理学調査では、気候変動(砂塵嵐・温暖化を含む)に伴う草地の牧草の植生の変化(毒草が繁茂)に伴い発生している植物中毒罹患ヤギ3例を入手し、臨床ならびに病理学的に解析した。その結果、いずれの症例も小脳プルキンエ細胞傷害を示し、臨床症状の悪化と一致してプルキンエ細胞の脱落が顕著となることが判明した。さらに、小脳のプルキンエ細胞の電子顕微鏡学的解析により、ミトコンドリアの異常を示唆する所見が得られた。 社会経済調査では、2011年夏季にモンゴル国南部の乾燥地域で気象災害に対応する形で遊牧民が行う長距離移動に関して聞き取り調査を実施し、長距離移動が社会・経済的に及ぼす影響の分析を行うとともに、主として乾燥度の違いに起因するモンゴル国内の地方差についても検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、2008年5月終わりに発生した砂塵嵐を対象に学融合的なアプローチを進めてきたが、研究開始の平成21年度から効率的にデータ収集・分析が行われ、当初の計画はほぼ予定通り順調に進んでいる。この成果は、International Workshop on Dust and Wind Erosion Studies in Chinaのなかでも紹介している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はひととおり行った解析結果を再検討して、昨年度までに作成した家畜の死亡数を推定する統計モデルを精緻化していく。さらに、そのモデルをもとに、気象災害に対する遊牧社会の脆弱性を評価するための指標群(社会経済、人と家畜の健康に関する)を考案してゆく。
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Research Products
(6 results)