Research Abstract |
全国の20-60代の男女約800人ずつを対象として,外来もしくは在来動植物に対する人々の駆除(外来種)もしくは保全(在来種)の意識を調査した。その結果,在来種よりも外来種において,生物の保全・管理に対する人々の意識に,分類群に応じて大きなばらつきが認められた。また,外来種においても在来種においても,実際にその生物を見たことがあるかどうかよりも,テレビや新聞で見聞きしたことがあるかどうかのほうが,対象生物に対する保全・管理意識の強さと高い正の相関を示したことから,マスコミの影響力が大きいことが示唆された。 「人々は,どのような外来種管理を望んでいるのか」,そして「外来種管理は,社会にどれだけの便益をもたらすのか」を明らかにすることを目的として,「環境経済評価」の手法を用いて外来種管理に対する一般市民の選好(価値観)を把握するとともに,外来種管理に対する人々の支払意志額を推計した。1)ため池調査対象地域とその他全国の双方で,アメリカザリガニの駆除に対する支払意志額が最も高く,次いでブラックバス,最後にブルーギルという結果が得られた。ため池調査対象地域とその他全国で,それぞれの属性に対する支払意志額に統計的に有意な差はない。2)選択肢3「対策をとらない」を選択した場合,何らかの対策をとることを意味する選択肢1または2を選択した場合と比較して,非常に大きく効用が低下することが明らかとなった。ここから,人々が「(内容にかかわらず)何らかの対策をとること」を強く望んでいることが明らかとなった。3)対策の水準ごとの効用水準を推定した結果,ブラックバス(ため池調査対象地域)とアメリカザリガニ(ため池調査対象地域,その他全国双方)については,根絶よりもその手前の水準の方が好まれることが確認できた。「根絶」への抵抗感や,なじみのある生物への愛着が影響している可能性が考えられる。
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