2011 Fiscal Year Annual Research Report
「マスキュリニティ」の比較文化史-公私関係の再検討に向けて
Project/Area Number |
21310171
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
三成 美保 摂南大学, 法学部, 教授 (60202347)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
栗原 麻子 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00289125)
福長 進 神戸大学, 人文学研究科, 教授 (90189960)
長 志珠絵 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (30271399)
京樂 真帆子 滋賀県立大学, 人間科学部, 教授 (00282260)
山辺 規子 奈良女子大学, 文学部, 教授 (00174772)
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Keywords | ジェンダー / マスキュリニティ / 比較文化 / 比較史 / 公私関係 |
Research Abstract |
2011年度の共同研究会では、以下の8報告を得て、それぞれ討論を行った。(1)「日本中世における雄々しさとマチズモ」(招聘)、(2)「日本中世後期のマスキュリニティ」(招聘)、(3)「平安時代の和歌における男性性・女性性」、(4)「現代アメリカ・ミュージカルとマスキュリニティ」、(5)「中世後期ヨーロッパにおける男性服の変化」、(6)「アテナイ民主制と『男らしさ』」、(7)「日本近現代史×男性史研究×占領期という時代」、(8)「男性の領域に越境する紫式部・女性の領域に越境する光源氏」。これらの報告・議論を通じて、主に以下の点を明らかにすることができた。[1]マスキュリニティの文化的相違。中世ヨーロッパではマスキュリニティの本質が身分ごとに異なり、貴族は武勇、学生は理性、職人は技術であった。武勇を重んじる王侯貴族におけるマスキュリニティの顕示には、豪華な緞子(織田信長)、男性器を誇張する華麗な装束(西洋中世末期)などが利用されており、禁欲・自己犠牲を尊重した近代市民社会とは大きく異なる。[2]女性のマスキュリニティ/マスキュリニティの両性具有性。古代アテナイでは「男らしさ(アンドレイア)」は女性に対しても否定されていない。日本平安期には、都で公私を行き来する両性具有的で貴族的な美が称揚された。マスキュリニティを男性とだけ結びつけるのではなく、女性や両性具有との関係で位置づける必要がある。[3]性的指向とマスキュリニティ。稚児愛はホモセクシュアルというより、稚児の女性視という意味で異性愛にあたるのではないか。古代アテナイでは、同性愛者というカテゴリーは存在せず、同性愛行為としての少年愛では「欲望の抑制」が美徳とされた。[4]公私関係におけるマスキュリニティの位置づけについては、「公」のなかに「両性具有性・女性性」と「男性性」が併存し、前者が後者に優越する文化(平安時代など)がある。なお、3年間の研究成果を総括して、資料集『マスキュリニティの比較文化史』を公表した。
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