2011 Fiscal Year Annual Research Report
日本の宗教とジェンダーの研究-近世社会における尼僧と尼寺の役割-
Project/Area Number |
21310172
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Research Institution | Otemae University |
Principal Investigator |
岡 佳子 大手前大学, 総合文化学部, 教授 (50278769)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岸本 香織 京都造形芸術大学, 芸術学部, 非常勤講師 (40440903)
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Keywords | 尼寺 / 比丘尼御所 / ジェンダー / 女性 / 触留 / 仏教 / 御所人形 / 霊鑑寺 |
Research Abstract |
本研究は、日本の宗教とジェンダーを考えるうえで重要な尼門跡文書の分析を通じて近世社会における尼僧と尼寺の役割を明らかにすることを目的とする。この目的を遂行するために、本年度は10回の尼寺文書研究会(4月23日・5月29日・6月25日・7月23日・8月13日・9月17日・10月15日・11月19日・12月18日・1月28日)を実施した。加えて、霊鑑寺調査(2月17日~19日)を行った。 研究会においては、前年度に引き続き、公儀から京都・奈良の比丘尼御所に下した触を書き留めた慈受院蔵「総持院触留帳」の享保13年から同21年に至る8冊を講読して翻刻を行った。公儀から京都の町に下された町触は翻刻され『京都町触集成』として刊行されているが、比丘尼御所に宛てた触については殆ど紹介されておらず、江戸幕府の比丘尼御所、あるいは門跡・公家方支配の実態までが明確になり、翻刻は近世寺院史研究に意義をもつ。さらに5月29日の研究会では、研究分担者:岸本香織「慈受院蔵「触留帳」に見られる嘉永大火に関する触について」8月13日・9月17日は研究代表者:岡佳子「前近代における「美術」概念の変遷」(1)(2)、11月19日は研究協力者:岡村喜史「親鷺・恵信尼とその家族-本願寺の系図を通して-」、12月18日は連携研究者:水谷友紀「薬師寺郷の近世」、1月28日は連携研究者:青谷美羽「門跡・比丘尼御所の歴代墓地にみる陵墓管理の-断面」、これら総計5回の研究報告を行った。 霊鑑寺の工芸品調査は一応昨年度で終了したため、本年度は霊鑑寺の蔵整理も兼ね蔵品の悉皆調査を行い、江戸時代から伝来した尼寺の宝物類の概要を明確にできた。さらに未調査の古文書類や染織品を発見することができた。これらについての詳細な調査は次年度および、将来の課題として残した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度の交付申請書「研究の目的」において、(1)慈受院蔵「触留」の講読、(2)研究代表者・分担者・連携研究者による個別研究、(3)霊鑑寺調査の三方向から活動を行うことを計画したが、1年間で10回の尼寺文書研究会を開催し、毎回講読を行って史料翻刻原稿を作成し、5回の報告を行って、研究参加者の研究の進捗状況を確認した。さらに、2月には霊鑑寺調査を実施し、尼寺蔵の江戸時代の宝物の概要を明確にするととともに、未調査の古文書や染織品も発見した。このような研究成果を上げることができ、研究は順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成21年度から3カ年にわたって研究会を開催し、慈受院蔵「触留」の講読と研究報告、および尼門跡寺院霊鑑寺の工芸品を中心とする調査を実施してきた。平成24年度は、研究の最終年度であるために、23年度まで講読を行った「触留」の約30冊の翻刻に関して、細密な校訂を行う。また各研究者が研究テーマに応じた論文を作成し、「触留」の史料集と論文を収載した報告書を作成する。霊鑑寺調査の成果に関しては、これを全て公開することは、寺院の警備上の問題から困難であるため、寺院側の了解を得た上で、その概要を論考の形で報告書する予定である。
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Research Products
(3 results)