2011 Fiscal Year Annual Research Report
生態学的現象学の技術哲学的展開――生態学的に優れた人工環境の構築に向けて
Project/Area Number |
21320003
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
村田 純一 立正大学, 文学部, 教授 (40134407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 哲也 立教大学, 文学部, 教授 (60384715)
池上 高志 東京大学, 情報学環, 教授 (10211715)
染谷 昌義 高千穂大学, 人間科学部, 准教授 (60422367)
長滝 祥司 中京大学, 国際教養学部, 教授 (40288436)
吉澤 望 東京理科大学, 理工学部, 准教授 (40349832)
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Keywords | 現象学 / 生態学的アプローチ / 技術哲学 / アフォーダンス / 空間 / 音響 |
Research Abstract |
本年度には、先の2年間でおもになされてきた理論的面からの研究を踏まえて、実践面への応用可能性の検討を中心に据えた研究がおこなわれた。7月の研究会では、研究協力者の川内美彦氏(東洋大学)によるユニバーサルデザインの現状とその問題点に関する発表、ならびに安藤昌也氏(千葉工業大学)による人間中心主義設計の意義と射程に関する発表がなされた。12月11日には、関連して行われている科研のプロジェクト「生態学的なコミュニケーションと社会的アフォーダンスに関する実証哲学的研究」との共同シンポジウムを開催した。このシンポジウムでは、ユニバーサルデザインとアフォーダンスをめぐる議論を、実際の椅子等の製作や看護の現場で活躍されている方々の発表を踏まえて行った。また、12月26日には、田坂さつき氏(立正大学)、水谷光氏(湘南工科大学)、生田目明彦氏(「朋」施設長)らにより障害者施設を場にして行われている障害者のための物作りと大学教育との連携のあり方が報告された。また、直江清隆氏(東北大学)による設計の哲学に関する発表では、設計と技術と社会との関係をめぐって原理的な検討がなされた。これらの試みによって、生態学的観点を踏まえながら人工物を設計・製作する場合に考慮しなければならない課題、とりわけ設計者・製作者中心の従来の見方へのさまざまな問題点が指摘された。しかし同時に、使用者の視点を重視しながら人工物の特性を生かす方法に関連する困難も指摘された。年度末最後の3月18日には、生態学的現象学の観点を特に音と聴覚の世界に焦点をあわせて検討する機会を持った。伊藤精英氏(はこだて未来大学)による聴覚世界の豊かさに関する発表と池上高志氏(東京大学)による音を使った新たな作品の可能性に関する発表がなされた。これらを通して音に固有な空間性の特質や、それらの存在論的な身分への原理的な議論がなされた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は4年計画のもので、最初の2年はおもに、生態学的現象学と技術哲学の連関を原理的・理論的な面から検討することに重点を置いて研究が計画され、実際、昨年までの2年間でこの課題に対して、さまざまな具体的な研究を踏まえた取り組みがなされた。そして、2011年度には、それまでの成果を踏まえて、ユニバーサルデザインを含む様々な実践的取り組みの現状と問題点を探ることが行われる計画であった。実際、上に記したようにこの課題に取り組むことが多様になされ、その点で、おおむね順調に研究が進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
2012年度は本研究最後の年であり、これまでの多様な研究をまとめることが課題となる。すでにそのために夏に集中的な研究会を連続して行い、成果を著作にまとめる試みがなされる準備が進んでいる。
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Research Products
(25 results)