Research Abstract |
中世シンハラ語仏教文献『シーハラ・ボーディヴァンサヤ』(シンハラ語菩提樹史)2章のUnicodeフォントによるローマ字化を行い,パーリ語の『マハーボーディヴァンサ』との比較研究を行った.研究の経過において,他の中世シンハラ語文献の重要性(パーリ語仏教文献の諸注釈として,本文の読み,および解釈にとって非常に有益であること,今まで知られていなかった北伝仏教の影響が見られること)が明らかになった.中世シンハラ語文献の多くは,19世紀末20世紀初頭のイギリス植民地時代にシンハラ文字で多く印刷出版されたが多くは今散逸し,失われようとしているので,その所在の調査とデジタル化が急務であることも判明した.世界でも最もこれらの資料を集めた故ベッヒェルト教授のコレクションについてウィーン大学,ゲッティンゲン大学,ミュンヘン大学で調査し,そのいくつかを入手したが,今後組織的な収集が必要であることも判明した.また,12月~1月にかけてスリランカの仏教関連遺跡を調査し,スリランカ仏教史の様々な知見を得ることができた.研究成果は,9月に国際サンスクリット学会(京都大学),同じく9月の日本印度学仏教学会(大谷大学)で発表し,また4月はハンブルク大学で,日本の玉虫の厨子に描かれるジャータカとスリランカ所伝の聖典外ジャータカの関連について講演し,このような,北伝と南伝伝承を新しい角度で研究する意義について理解が得られた.
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