2010 Fiscal Year Annual Research Report
一九-二〇世紀転換期における「戦争ロマン」の表象についての比較文化史的研究
Project/Area Number |
21320020
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山室 信一 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (10114703)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小関 隆 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (10240748)
岡田 暁生 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (70243136)
伊藤 順二 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (80381705)
王寺 賢太 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (90402809)
久保 昭博 京都大学, 人文科学研究所, 助教 (60432324)
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Keywords | 第一次世界大戦 / 文化 / プロパガンダ / 総力戦体制 / 芸術史 / 大衆文化 |
Research Abstract |
本年度は京都大学人文科学研究所において、22回の研究会を催し、主として第一次世界大戦中の文化プロパガンダについて、発表討論を行った。それに加えて三回のシンポジウムを催し、それぞれ文化政策、総力戦、一九二〇年代の戦後処理について、考察を深めた。また2010年5月には、ベルギー(イープル)および北フランス(ソンム)における第一次世界大戦戦跡を調査した。さらに人文書院より、これまでの研究成果の一部をとりまとめるものとして、「レクチャー・シリーズ 第一次世界大戦を考える」全六巻を出版した。ここでは徴兵制、食糧制度、日本の総動員体制への影響、音楽・美術.文学におけるプロパガンダの問題等を扱った。世紀転換期から第一次世界大戦においては、徴兵制などの国民の「平等化」が推進される一方、それは国家体制における「適切なマンパワー配置」を可能にするための政策という側面があり、使い捨て可能な人的資源とそうでないものの選別するシステムでもあった。また戦争中に音楽や演劇などの文化芸術が、非常時において国民の精神的団結を高めるものとしてプロパガンダに使われたことは、一方で古典的レパートリー(ドイツの場合はゲーテ、シラー、ベートーヴェン、ワーグナーなど)の固定化と後の政治利用の伏線になると同時に、戦前からすでに始まっていたアヴァンギャルド芸術の先鋭化ないし反社会化をさらに促進することになる。これは一方で、一九二〇年代において共産主義と結びつき、「闘う音楽/演劇」という形をとり、他方でそれは、シェーンベルク・サークルに顕著に見られるように、社会的有用性の徹底的な否定というエゾテリックな方向へと進むことになった。
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Research Products
(14 results)