2012 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける仏教と神信仰との融合から見た日本古代中世の神仏習合に関する研究
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21320024
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
吉田 一彦 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 教授 (40230726)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
脊古 真哉 名古屋市立大学, 人文社会系研究科, 研究員 (20448707)
上島 享 京都府立大学, 文学部, 准教授 (60285244)
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Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 神仏習合 / 仏教史 / 文化交流 / 本地垂迹 / 宗教儀礼 / 日本書紀 / 山の宗教 / 神道 |
Research Abstract |
本年度、研究代表者は、日本における神仏習合の成立と展開に密接に関係するテーマである「仏教伝来」について、『仏教伝来の研究』(単著、吉川弘文館、353頁)を刊行した。本書は、「仏教伝来」について記述の見える『日本書紀』『元興寺縁起』『上宮聖徳法王帝説』『顕戒論』を読解、検討し、中国の史料と比較して、その史料としての価値を明らかにしたもので、これらの史料に見える神仏関係の記述についても史料批判を加えている。そして、仏教伝来に蘇我氏が大きく関わったことを朝鮮半島の近年の寺院発掘調査と比較して論じた。また平安時代の九世紀の神仏習合の発展について、論文「宗叡の白山入山をめぐって」を発表した。ここで、日本の神仏習合の聖地として名高い白山を最初に開いたのは宗叡と考えられることを、『日本三代実録』の記事を分析して論じた。彼は入唐して五台山をよじ登ったが、彼の白山入山は、中国の神仏の聖地であった五台山と重なり合わせるように語られていることを説いた。研究分担者の上島享は、論文「〈中世仏教〉再考」を発表し、「中世仏教」と「中世神道」との関係を考察するキイ概念として「心行清浄」に注目し、この概念から中世の仏教と神道との関係や思想的特質について研究を深めた。連携研究者の佐藤文子は、論文「臨時得度の政治思想」を発表し、出家させることが功徳にあたると説く『出家功徳経』なる経典に注目し、そこから日本古代の出家の思想を解明した。 海外調査としては、研究代表者と研究分担者が中国遼寧省~内モンゴル自治区の遼の仏教関係文物の調査を、連携研究者がベトナムの信仰や仏教についての調査を実施した。調査概報を、『名古屋市立大学人間文化研究所年報』に発表した。国内調査は、研究代表者と連携研究者が日吉大社で実施される神仏習合儀礼である「山王講」の調査を行なった。また、研究代表者が出雲の神社と寺院の調査を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した研究は、おおむね順調に進展していると考えている。これまでの4年間で、比較的順調に関係する論文、著書を刊行することができた。それらは一定の評価を得ているものと考えている。また、国内外の実地調査も順調に進展しており、日本では必ずしも注目されてこなかった史料を実見することができ、また現地を踏査することができた。これらの成果に基づき、日本の神仏習合を文化交流の中で考察する研究を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
研究成果の発信について、学術書を刊行することを構想し、研究代表者、研究分担者、連携研究者で、この問題について議論を重ね、また出版を引き受けてくれる書肆の編集者とも意見交換することができた。議論の結果、これまでの研究成果は大変充実したものであるが、一書にまとめるにはまだ十分ではないところがあり、このまま一書にまとめていくのも意味があるのだが、しかし、それよりは追加研究を実施して、もっと大きな本を刊行したほうが意義深いとの意見が多数を占め、また出版社としても大型企画として大著を計画したいとの意向があることが判明した。次年度にこの問題について議論を重ね方針案を確定したいと考えている。
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Research Products
(8 results)