2011 Fiscal Year Annual Research Report
江戸時代伊勢商人の文芸活動の研究ー石水博物館(津市)所蔵文献資料を手がかりに
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21320052
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
安田 文吉 南山大学, 人文学部, 教授 (80121474)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安田 徳子 岐阜聖徳学園大学, 教育学部, 教授 (00135279)
山田 和人 同志社大学, 文学部, 教授 (60191300)
冨田 康之 北海道大学, 文学研究科, 教授 (20217540)
神谷 勝広 同志社大学, 文学部, 教授 (40233952)
飯塚 恵理人 椙山女学園大学, 文化情報学部, 教授 (00232132)
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Keywords | 川喜田家 / 長井家 / 浄瑠璃 / 歌舞伎 / 馬琴 / 伊勢俳壇 / からくり / 謡本 |
Research Abstract |
本年度は、昨年度までにほぼ修了した書誌データの整備に基づき、分担者各位の専門分野に於いて、重点資料の詳細調査を進め、下記に記したような発見があり、伊勢商人の文芸活動の広さと深さ、江戸時代の文芸界に果たした役割の大きさが、次第に明らかになってきた。 1,歌舞伎番付・絵尽・役者絵・錦絵については、まず、写楽の肉筆画(老人図)についての詳細調査を行い、その意義を考察した。浄瑠璃番付の詳細調査の結果、新出上演記録87枚、興行未確認番付18枚、異板番付9枚を確認した。絵尽を分析して、コマ割りと配列の法則を引き続き考察した。からくり番付の詳細調査では、竹田芝居の興行資料が少ない寛政期前後の実情を把握できる資料が多数含まれていることが明らかとなった。座敷からくりの調査は玉屋庄兵衛氏の助言を願い、次年度の解体調査に向けて予備調査を行った。 2,謡本・能楽関係は、伝烏丸光広筆謡本(観世流)の詳細調査を行い、ワキ方の所作や狂言応答などの書き込みが多いことに特徴があり、江戸初期の伝書に類例の少ない貴重な謡本であることが明らかとなった。 3,資料中に似雲『としなみ草』巻二草稿が発見でき、川喜田爾然が伊勢俳壇とも深く関わっていたことが明らかとなった。太田垣連月尼と川喜田石水との交流を確認できる資料も発見できた。 4,近世散文の分野で、資料中に小津桂窓・殿村篠斎と馬琴の書簡があり、それによって、馬琴が自作を評した『著作堂旧作略自評摘要』なる書の存在が明らかとなり、桂窓写のその書を資料中から発見した。これは馬琴研究・読本研究にとって第一級資料の発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的である伊勢商人の文芸活動の実態を明らかにすること及びその意義、文学・演劇研究に有意義な資料の発掘と提供については、実績報告に示した如く、文学・演劇両分野において、新資料の発見が相次ぎ、順調に進んでいる。「所蔵文献目録」の作成については、予想以上に、他所にはない貴重な資料が多く、詳細目録を作成するには、時間がかかっている。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は最終年度であるので、シンポジウムを行い、伊勢商人の文芸活動の意義を確認する。からくりについては、実演を行う。石水博物館でそれに合わせて展示を行ってもらい、新資料など、文学・芸能研究に新たな資料を提示する。また、それぞれの分野において、新たに発見した資料あるいは資料から考察した研究結果を論文化し、報告書として纏める。 所蔵文献目録については、実績に記した如く、詳細目録の作成にはまだ時間が必要であるので、現段階の書誌データをデータベース化して、石水博物館に提供する。
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