2011 Fiscal Year Annual Research Report
文学・芸能・絵画をめぐる近世的表現様式と知の交流の研究
Project/Area Number |
21320053
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Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
Principal Investigator |
山下 則子 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (40311162)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武井 協三 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (60105567)
小林 健二 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (70141992)
井田 太郎 国文学研究資料館, 研究部, 助教 (20413916)
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Keywords | 近世的表現様式 / 近世文学 / 近世芸能 / 浮世絵 / 学際研究 / 見立絵本 / 評判記 / 明末詩箋 |
Research Abstract |
平成23年度の研究成果としては、歌舞伎学会において学術講演「役者絵『見立三十六歌撰』について-文学と歌舞伎から-」(山下則子)を行い、国際的な研究成果の公開として第3回日本文学国際研究集会において「『おもはく寄合』について」(武井協三)、「見立絵本『〔見立花づくし〕』について」(山下則子)の研究発表を行ったことがある。前者は役者見立絵が歌舞伎役者の見立てのみではなく、近世和歌絵本に描かれた挿絵を背景として利用している可能性について言及したものであり、和歌注釈の歴史を踏まえた理解により、更に興味深い解釈が可能になる指摘をしたものである。後者は近世中期の若衆と遊女を鳥に見立てた和歌を載せる評判記と、「花」づくしの見立て絵本の紹介であり、それぞれあまり言及されなかった資料に新しい見解を披露した。これらの講演や研究発表は、大変好評を博した。 本年度収集資料である見立絵本『奇妙図彙』、浮世絵『鳥の身振り』や、一枚刷り『明和期役者俳諧摺り物』、『吉原にわか番組』など、珍しい資料が集められ、平成24年に開催予定である展示の具体的な計画作成を整えた。共同研究会において、研究成果を発表し検討した。その主な内容は、「「やっし」再考-歌舞伎から人形浄瑠璃へ-」(原道生)、「江戸戯作における「展示型見立て」(崔京国)、「明末詩箋の流布と影響付:『文敏先生遺墨』について」(伊藤善隆)、「見立絵本『〔道化生花〕』について」(山下則子)などであり、今まであまり言及されていなかった見立てや開帳を題材とした作品を紹介したり、中国明末の詩箋が、一部の学者から俳譜を通して、多色刷り浮世絵を生み出した分野の越境などについて解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近世的表現様式の個々の研究に関しては順調に進んでいるが、歴史的展開という視点がやや充分には検討されていない。ただし、個々の研究は着実に新天地を切り開いており、有意義な成果をあげつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
近世的表現様式の個々の研究に関しては、新しい着実な成果をあげているのであるが、これらを繋ぐ共通した表現様式を考察するまでには至っていない。そのため、展示やシンポジウムで、各研究者の様々な成果を総合的に把握することにより、これらに通底する表現様式について、学際的に考察することを行いたい。
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