2012 Fiscal Year Annual Research Report
文学・芸能・絵画をめぐる近世的表現様式と知の交流の研究
| Project/Area Number |
21320053
|
|---|
| Research Institution | National Institute of Japanese Literature |
|---|
Principal Investigator |
山下 則子 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (40311162)
|
|---|
| Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神作 研一 国文学研究資料館, 研究部, 准教授 (30267893)
小林 健二 国文学研究資料館, 研究部, 教授 (70141992)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
|
| Keywords | 展示 江戸の「表現」 / シンポジウム 江戸の「表現」 / 展示解説書 / 国際研究者交流 / 在伊日本古典資料目録の校正 / イタリア |
|---|
| Research Abstract |
本研究は日本の近世文学・近世芸能・近世絵画に共通して見られる特色ある表現様式を、原典資料に即して明らかにし、その共通性や影響関係等を明らかにすることを目的としている。これらの研究は歴史的観点からの縦軸や海外からの影響という横軸にも考察の範囲を広げるものとする。
本年度は研究成果公開のために、10月～11月に国文学研究資料館において展示とシンポジウムを行った。展示計画は23年度より十分に検討しているが、共同研究会での研究成果を基にした展示解説を冊子形態にして、展示会場に備えた。展示には2000人を超す観覧者が訪れ、大きな反響があった。また一般人をも参加対象にしたシンポジウムを11月3日に開催し、好評を博した。このシンポジウムの内容は、平成25年度に作成する研究成果報告書に掲載する予定である。
これらの展示やシンポジウムを実行するにあたり、共同研究会や展示準備・シンポジウム委員会を開催した。共同研究会においては、展示の構成、展示作品の策定、展示作品解説の検討などを行い、展示・シンポジウム準備委員会は、展示やシンポジウムの具体化に向けて多くの準備を行った。
また、国際的な研究成果の公開としては、9月22日イタリア・フィレンツェにおけるAISTUGIAとの連携である第5回日本文学国際共同研究集会において、「「見立」ることばの力―絵本と歌舞伎―」(研究代表者 山下則子)と題して研究発表を行い、日本における同音異義の言葉を遊戯的に用いる手法の紹介や近世における歌舞伎の台詞術や上方絵本における展開の紹介などをビジュアルに行い、多くの質問を得た。
在伊日本古典資料(キオッソーネ東洋美術館蔵)に関する目録を作成しており、最終的な校正の段階に入った。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
近世的表現様式の各分野の研究に関しては、かなり緻密な研究成果が積み上げられてきている。多くの共同研究会やシンポジウムを積年重ねてきたことの成果がまとまりつつあるといえる。
ただし絵画と芸能と文学を結ぶ交流や影響関係に関する研究については、各分野の研究における成果を慎重に積み重ねて、ようやく着手する環境が整ったというべきであり、各分野の実証的な研究を丁寧に積み上げる方法であるために、なかなか大きな進展は見られない。
しかしそうした学問的厳密さを兼ね備えた学際的な研究こそが、今求められているものであり、本研究はそれを部分的にでもかなえようとしている。本研究でも、中国の明末詩箋が大名や俳諧関係者を経由して、日本の多色刷り浮世絵を生み出したことへの具体的な資料を用いての紹介や、「風流・やつし」が芸能においてどのようなものであり、それが絵画や文学にどのように反映されているかという研究などの各分野を超えた研究の萌芽が見られる。
|
| Strategy for Future Research Activity |
近世的表現様式の各分野に於ける研究に関しては、新しい着実な成果をあげているが、これらを繋ぐ共通した表現様式がどのようにして形成され、どのように変容していったのかについては、まだ明確な研究成果が出せているとはいえない状況である。
そのため、研究成果報告書を作成するに際して、もう一度これらに通底する表現様式の形成に関する、芸能・文学・絵画の各研究分野を超えた学際的な考察を行う必要がある。
|
