2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21320116
|
Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
吉川 聡 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 文化遺産部, 歴史研究室長 (60321626)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 晃宏 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 史料研究室長 (30212319)
|
Keywords | 近世東大寺文書 / 近世興福寺 / 奈良の明治維新 |
Research Abstract |
本年度は、現在東大寺図書館が保有している中村準一寄贈文書の、明治維新期の日記の翻刻を進めた。今年度は慶応3年・明治2年等の日記の翻刻作業をおこなった。また、これまで翻刻した部分の校正作業も平行しておこなった。中村家は興福寺の唐院承仕をつとめた家柄である。その日記を読み解くことにより、その時期の興福寺・南都諸寺の動向をより明確にしたいと考えているところである。翻刻している慶応3年・明治2年の日記は、明治維新前夜の奈良のやや不穏な様子、また、明治維新の中で変化しつつある状況が読み取れる資料だと考えている。 また、継続して実施している、東大寺図書館所蔵の新修東大寺文書聖教の調査については、東大寺図書館の移転作業に伴う出納業務の停止によって、平成23年度中には原本調査を実施することができなかった。そこで科研の繰越申請をおこない、平成24年の4月に調査を実施した。第69函~第76函を調査し、ラベル貼り・書誌事項のパソコンへのデータ入力をおこなった。東大寺年預五師のもとに集積された近世文書、中世~近世の聖教・経典断簡など、多様な様相を示す。また一点のみ、近世に書写された南北朝時代の文書もあり、注目されるところである。全体的には、古文書は年預五師の元に集積された文書が大半を占めるようだが、聖教・経典等は雑然としており、元来の所蔵元を追求するにはさらに検討する必要があるだろう。また平行して写真撮影をおこない、中村準一寄贈文書の明治維新前後の日記について、精細な写真を撮影した。 その他、奈良の旧家等が所蔵する、江戸~明治時代の資料の調査研究をおこなった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
東大寺図書館の移転に伴い、東大寺図書館における原本調査は、当初計画よりもやや遅れ気味である。その一方、すでに調査した資料の中から明治維新期の日記を見いだし、翻刻作業を続けている。この点は当初計画とは異なっているが、得られる成果としては、明治維新期の奈良・古寺社に関する基礎資料を提供できる。これらの点を総合的に判断して、順調と考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
新修東大寺文書聖教を、それなりの時間にわたって調査してきた。よってそれらをいかにして公表していくのかも考えていく必要がある。当初計画では、最終年度に報告書を作成する計画である。ただしその場合、最終年度の負担がかなり過大になるので、可能ならば、報告書を2冊に分け、前年度に1冊を刊行する可能性も考えている。
|
Research Products
(2 results)