2011 Fiscal Year Annual Research Report
三次元的パターンマッチング法の応用による土器製作者個人の高確度同定法の確立と展開
Project/Area Number |
21320150
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Research Institution | The International University of Kagoshima |
Principal Investigator |
中園 聡 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 教授 (90243865)
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Keywords | 考古学 / 文化財科学 / 個人同定 / 真空含浸法 / モーションキャプチャ / 三次元レーザースキャナ / 民族考古学 / 動作解析 |
Research Abstract |
本研究は、土器製作者の個人同定法の確立、方法のさらなる開発・改善、実資料への応用による考古学的に高次な問題の解明等を目的とする。平成23年度は、タイ北部の土器製作村で本格的に調査を研究協力者らと実施し、多数の製作者の個人内・個人間変異、同一製作道具の通時的変化(すり減り)と製作時の身体技法の関係、土器素材の化学特性の個人差など多岐に亘るデータを収集した。これらは考古学的過去における土器製作者個人を同定する際に重要なデータとなると考える。また、以前の予備調査等を含め数年間の追跡データの質・精度は、世界に類を見ず、個人の身体技法や癖の通時的安定性・変異を知る具体的証拠として学術的に極めて価値が高いと自負している。こうしたデータの解析(モーションキャプチャによる動作解析も含む)を慎重に実施する必要があるが、これまでに、製作者ごとに通時的に安定した要素と変化しやすい要素とがあることや、製作道具の摩滅・ダメージの程度やプロセス等が明らかになったほか、三次元マッチングによる同一工具痕の同定基準など本研究上重要な手掛かりを得た。さらに、本研究の特徴である多角的アプローチによる個人同定法を実際の土器への適用試験等も実施し、その有効性が確認できた。一方、タイでは製作者自身による土器製作者識別実験等も実施し、当事者レベルでの判断基準の一端を知ることができた。同一工具による差異の出現のプロセスやメカニズムの把握に役立てるため、蓄積データや実験、民族考古学的調査等を通して同一工具の微細な変化についても検討し、3D画像の比較によって具体的な変化をおさえることもできた。蛍光エポキシ樹脂含浸法による粘土帯接合痕の可視化実験にも昨年度から取り組んできたが、実資料や民族資料に適用し、接合法に個人差が表れる可能性があるとの見通しを得たことも新たな成果である。以上、多くの新知見と成果を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
土器製作者の個人同定法について多方面にわたる開発研究が極めて順調に進展しており、製作者の身体技法やその安定度、認知的カテゴリーの復元など高次の考古学的課題に役立ちうる、予想を上回る成果をも得ることができた。また、民族考古学的調査においても本研究に資する多くの新知見が得られたことなども併せて、予定していた当初計画を上回る進展と判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に計画を大きく変更することなく実施する予定である。民族考古学的調査については年度を越えた追跡調査が本研究に大きな成果をもたらすと判断されるため、可能な範囲で実施することで本研究を完成度の高いものにしたい。成果発表は精力的に行ってきたが、より理解を得るため研究会またはワークショップ等も精力的に行うべく準備する。
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Research Products
(9 results)