2012 Fiscal Year Annual Research Report
三次元的パターンマッチング法の応用による土器製作者個人の高確度同定法の確立と展開
Project/Area Number |
21320150
|
Research Institution | The International University of Kagoshima |
Principal Investigator |
中園 聡 鹿児島国際大学, 国際文化学部, 教授 (90243865)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川宿田 好見 鹿児島国際大学, 就業力育成プロジェクト室, 就業力育成プロジェクト調査研究員 (40616166)
|
Project Period (FY) |
2009-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 考古学 / 文化財科学 / 三次元計測 / 個人同定 / 身体技法 / モーションキャプチャー / 土器製作 / 認知考古学 |
Research Abstract |
土器製作者個人の高確度同定法について継続して研究開発・検討を実施した。三次元マッチング、蛍光X線分析等の応用的検討のほか、視覚性の低い要素の可視化などについても検討し、実資料の接合痕の可視化法について進展があった(日本文化財科学会ポスター賞受賞)。開発した諸方法を実資料を含む多様な対象に適用し、その有効性を確認できた。 本年度より身体技法に詳しい川宿田好見を研究分担者とし、モーションキャプチャーによる土器製作者の身体技法の解析など身体技法関連の諸検討を実施し、民族考古学的調査で蓄積した製作者の動作に関する詳細なデータ解析等を実施できた。前年度、タイ北部の土器製作村での調査では大きな成果が得られ継続的な調査が必要となったが、研究協力者の協力を得つつそれを実施することができた。動作解析により、通時的な動作の安定性や変異等の定量化など、いっそう詳細で具体的な情報を得ることに成功したことなど意義ある成果があった。 以上を通じて、単なる個人同定にとどまらず、物質文化とヒトの行動との間の相互作用を考察するのに大きく役立つという認識を深めることができた。また、集団ではなく個人というミクロな単位に着目して過去を復元するという考古学の理論の変革に関わる点についても、印刷物・学会発表のほか様々な機会・メディアを通じて、広く理解を得るきっかけとなるよう意識しつつ遂行した(「ひらめき☆ときめきサイエンス~ようこそ大学の研究室へ~KAKENHI」(研究成果の社会還元・普及事業)でも本研究に基づき高校生等への研究体験を実施した)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究の遂行により、物質文化と身体技法の解明等に高度に寄与しうる新知見や、その年次を越えた製作者のデータが蓄積されつつあることなど、当初想定していたものよりもいっそう意外性のある高次な領域の解明につながることが明らかになった。これは、本研究の学術的・社会的意義をさらに高めることにつながる。
|
Strategy for Future Research Activity |
個人同定の高確度同定法の開発についてかなり成果が上がっており、継続した研究を実施して方法面での完成度の向上に努める。 製作者の身体技法やカテゴリー化等、製作者の認知的側面の解明に資する濃密な情報も得られつつあり、個人研究の意義を高め、理論面を進展させるのに寄与するはずである。そのため、民族考古学的調査のデータ解析や実験等を継続して実施する。 現物の考古資料への適用例を増加させ、従来解決が困難であった諸課題の解決、新たな解釈や視点の提示等に取り組む。これにより、個人に着目することで格段の成果を上げうるという根拠を広く示し、新分野開拓へのステップとする。 最終年度にあたり、複雑な解析や整理を進行させ、成果公表や周知活動等にいっそう取り組む。研究代表者と研究分担者のほか研究協力者の間で緊密な協力体制は築かれているが、それを維持しつつ実施する。
|