2011 Fiscal Year Annual Research Report
縄文時代の集落形成と森林利用に関する考古学・年輪年代学・民俗学的研究
Project/Area Number |
21320151
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
木村 勝彦 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (70292448)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大楽 和正 新潟県立博物館, 研究員 (20526959)
中村 俊夫 名古屋大学, 年代測定総合研究センター, 教授 (10135387)
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Keywords | 年輪年代 / クリ / 花粉分析 / 高精度編年 / 河川 |
Research Abstract |
・新潟県青田遺跡ではコナラ属の年輪年代で作られた時間軸上に、考古学的な対応関係をもとにクリの木柱を落とすことができた。年代の決められたクリ木柱について、定着時期の光環境を反映する初期成長を算出し、遺跡存続期間にわたる平均初期成長速度の推移をもとめたところ、時期によって大きな変動が認められ、主要な集落の形成に先立ってクリの成長を促す環境が存在したことが示唆された。一方でコナラ属の木柱は時期によらず一定の初期成長速度を示した。 ・青田遺跡ではボーリングコアの花粉分析から集落すぐ西側の自然堤防の微高地にクリ林が形成されていたことがほぼ確実となった。越後平野北部の晩期遺跡の従来の花粉分析結果を整理すると、拠点となる野地遺跡では広範囲にクリ純林が存在する一方で、道下、昼塚、江添などの遺跡ではクリ花粉はまれであり、クリ林がどこにでもあったわけではなく、拠点となるムラの自然堤防上に作られていたものと考えられた。また、このような違いは流路の安定性と関係していることが地質学的な検討から見えてきた。 ・居住域に近接して出土した中西遺跡の埋没林は保存性の良さから当時の里山が高精度で復元できた。組成的には現生の河畔林のエノキームクノキ群集に対応し、林分の現存量に対応するBAが15m2/haと小さく、ある程度の隙間のある林分であったこと、明確な伐採痕がほとんどないことなどが確かめられた。ただし、年輪年代による枯死の同時性は確認できなかった。 ・縄文~近世の遺跡で普遍的に出土するケヤキ材の年輪年代学への適用の可否を出土材で検討し、年輪数の多さ、個体間相関の高さともに年輪年代解析の対象として有効であることを示した。 ・ウイグルマッチングによる年代推定がほぼ完了し、晩期の遺跡間の年代的位置づけが明らかになった。 ・青田遺跡出土の炭化材の解析を開始した。多くの材が太い材の破片ではなく、細い枝や低木に由来するものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定していた調査がほぼできたことに加えて、従来得られている試料やデータの解析、検討方法を工夫することで様々な知見が得られつつあるため。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であるため、とりまとめ・公表を主体とし、実験・研究は基本的に従来進めてきたものの残りないしは補足的なものにとどめる(例えば炭化材の分析)。 今まで通常の年輪年代、放射性炭素年代を併用することで従来の考古学と比べて高精度な時間軸をつけた議論を進めてきたが、一部、例えば青田遺跡のS3とS1,2層期の関係など確実性の低い推定もある。このため、年輪幅に加えて酸素同位体を用いた年輪年代の解析を開始した。最終年度ではあるが、この分析を進めて少なくとも青田遺跡に関しては信頼性の高い年代を確定する。
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