2010 Fiscal Year Annual Research Report
「社会的なもの」の再構築:多様性と可能性の人類学的研究
Project/Area Number |
21320164
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
春日 直樹 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 教授 (60142668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中川 敏 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60175487)
栗本 英世 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (10192569)
田辺 明生 京都大学, 大学院・アジア・アフリカ地域研究科, 教授 (30262215)
石井 美保 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (40432059)
森田 敦郎 大阪大学, 人間科学研究科, 講師 (20436596)
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Keywords | 社会的なもの / 人類学 / 国家 / 多様性 / 生政治 |
Research Abstract |
本研究テーマを世界的にリードする人類学者たちを招いて国際会議を開催するとともに、提出された各論文についてクローズドな研究会の形で綿密に議論を重ねた〔論文提出者は、Viveiros de Castro、Annemarie Mol、Heonik Kwon、Casper Jensen、春日直樹、森田敦郎の6名であり、会議と研究会では本研究の代表者および分担者が討論に参加した〕。「社会的なもの」がどう構築されるかについて、各アプローチの類似性と差異を明らかにすることで、構築主義的な理論の奥深い意義を共有するに至った。 ここでいう構築主義とは、近年の人類学において「認識論から存在論への移行」と称するものに符合する。「存在論」の内容についてはこれまでさまざまな問題点が指摘されてきたが、Viveiros de Castro教授が主導する議論において、以下の点を明らかにできた。(1)形而上学的な概念ではなく、人類学的な実践をあらためて定義づける用語である。(2)人類学が他者の存在論的な基盤をハード・サイエンスにゆだねて、ただ彼らの人間性を表象することに専念してきたことに反省を迫る表現である。(3)存在論的な基盤について他者自身へと問いかけ、彼らに自己決定の権利を回復させるという点で、それは政治的な戦略性を帯びた言葉である。 会議の翌日に開いた関係者だけの討論会では、現代の社会状況について「存在論」的な立場から具体の話題が提起された。とくに自然科学を範例として数値化、基準化、ヒエラルヒー化の作業がわれわれの生活の隅々に浸透しており、Marylin-Strathernの指摘する「監査文化」を形成していることが話題となった。
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