2009 Fiscal Year Annual Research Report
高校生文化と進路形成の変容(第3次調査)単線型教育体系における多様化政策の課題
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21330193
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
樋田 大二郎 Aoyama Gakuin University, 教育人間科学部, 教授 (80181098)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩木 秀夫 日本女子大学, 人間社会学部, 教授 (90114389)
耳塚 寛明 お茶の水女子大学, 副学長, 副学長 (40143333)
大多和 直樹 東京大学, 教育学研究科, 助教 (60302600)
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Keywords | 高校 / 生徒文化 / 進路形成 / 国際比較 / 制度改革 / 多様性 / 個性重視 / 教員の資質向上 |
Research Abstract |
本年度は国内の高校を対象に生徒アンケートと学校訪問聴き取り調査を行い、さらに国際比較調査の対照国であるシンガポールで文科省、高等専門学校、普通科高校、職業科高校への聴き取り調査を行った。本格的分析は今後になるので、現段階での印象を紹介したい。 国内では1990年代に見られた特色ある学科・コースの設置、総合学科創設などの多様化と個性重視の制度改革が一段落して、今日では、"個別対応的な面倒見"が広がっていた。そして、それを可能にする為に、制度改革から「教師力養成」とシステム構築へという潮流の変化が起きていた。多様化と個性重視の現状としての個別対応的な面倒見は、"過保護"になりがちで、高校は生徒の主体性を奪うことを危惧している。生徒の"そこそこ志向"や家庭の影響力が強まる中、高校の個別対応的面倒見が学習の奨励と教育格差の解消に重要な役割を果たす可能性がある。また、地方の高等学校においては、普遍的な教科を教え都会の有名大学へ送り出すことが疲弊しつつある地域から生徒を奪い取ることになるという問題を抱えていた。 シンガポールの教育動向をみると、学力下位層のマンパワー浪費問題(落ちこぼれ)への対応と学力上位層の社会貢献意識の低下問題への対応(人間的側面の教育への配慮)とを政策の重要課題に据えている。シンガポールの教育関係者によると、これらはマンパワー・ポリシーの精緻化であるとともに、"教育的価値"の具現化でもあった。 また、上記の目的を果たすために、シンガポール政府は学校の自己点検・評価を導入しているが、相互評価の査察官に他校の教師を入れることで、教育の成功例・課題のシェアを行っている。また、結果の取り扱いが非公表である。シンガポールの自己点検・評価は、競争的・懲罰的なものというよりは、組織内で目標を作成しその達成度を確かめ合、学校間で共有するというポジティブな機能を果たしている。
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Research Products
(2 results)