Research Abstract |
本研究の目的は,確率モデルのくりこみ群による解析という枠組みから出発して,しかし,くりこみ群に必ずしもこだわらずに,既存の確率モデルとは異なる数学的広がりを持つクラスを発見し,その性質を研究することである.他分野からの刺激を数学,特に確率論,の新しい概念として結実させることを目指す.本研究課題応募時以降の,研究代表者の異動に伴う研究環境の大きな変化を考慮して,ランダム系の研究,無限粒子極限の研究,および,経済学や数理統計学を含む数理科学への確率論の応用も主要な研究対象に加える.本年度は,分担者の体制を組み替えて現任地に重点を移した. 研究成果の一つとして,以前の科研費研究課題の最終年度から継続中の,確率ランキング模型と名付けた多自由度確率過程(粒子系)の研究が順調に進んでいる.前年度の分担者竹田雅好の在籍する東北大学の針谷祐,竹島佑介,小林孝長,前年度の分担者首である都大学東京の服部久美子,ならびに大阪大学の永幡幸生による共同研究が東北数学雑誌に掲載された.これは前年度までに研究していた同模型の無限粒子極限に関する主結果を,粒子のランダムな動きを引き起こすポワッソン過程の強度が時間的に一様でない場合へ拡張したものである.より具体的には,時間的に一様でない場合に,粒子の軌道と位置-ジャンプ強度結合経験分布に関する大数の法則(流体力学的極限)を示した. 応用上,粒子の軌道(特性曲線)を,オンライン書店Amazon.co.jpの本のランキングや掲示板集合体2ch.netのスレッド一覧の順位に適用できることを指摘していたが,今回の結果を用いて,社会現象の持つ昼夜差の影響を模型に組み込む方法を実際のデータで検証した.ヒット作や人気スレッドへの非ロングテール的集中現象を補強するデータ,および,深夜にこれらの活動が活発で早朝に少ないという昼夜差を示すデータを得た.
|