2011 Fiscal Year Annual Research Report
物理的クォーク質量における有限温度・有限密度QCDの格子研究
Project/Area Number |
21340049
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
金谷 和至 筑波大学, 数理物質系, 教授 (80214443)
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Keywords | 素粒子論 / 量子色力学 / クォーク・グルオン・プラズマ / 格子場の理論 / 計算物理学 / 有限温度 / 有限密度 / 状態方程式 |
Research Abstract |
本プロジェクトは、有限温度・有限密度QCDを、クォーク質量を現実の価に合わせたNf=2+1格子QCD(動的なup,down,strangeクォークを含むQCD)のシミュレーションにより研究すること、及びそのための手法の開発を目的としている。多くの研究はスタガード型格子クォークを使っているが、原理的な問題点を含んでいるので、理論的に確立したウィルソン型クォークを使って研究する。 平成20年度に開発したT-integral法は、様々な温度のシミュレーションを、一つの格子スケールで実行する方法で、計算時間を大幅に抑えつつ、精度の高い有限温度計算を遂行する可能性を拓いている。平成20年度にクエンチ近似による試験研究で方法としての有効性を確認し、平成21年度に現実的なNF=2+1でのシミュレーションを、u,dクォーク質量が現実よりやや重い点で開始した。平成22年度にかけて、有限温度シミュレーションを実行し、ウィルソン型クォークとして初めてNf=2+1QCDの状態方程式の計算に成功し,その成果を論文として投稿した。また。同時に、相転移次数を簡便に調べる新しい方法として、ヒストグラム法を開発し、その有効性の検証を、クォーク質量が大きい極限の近傍で行い、相構造を決定した。その成果はPhys.Rev.Dに論文として出版された。 さらに、これらの研究とは独立に、有限温度の中間子スペクトル関数の計算方法を開発した。現在最もよく用いられているスペクトル関数の評価方法は、最大エントロピー法に基づくものだが、中間子伝搬関数に関する格子上の離散的な数点における中間子伝搬関数の情報から連続関数としてのスペクトル関数を導こうとする「i11-posed」な導出方法で、その結果の信頼性には不定性があった。我々は、格子上で本来期待される離散的なスペクトル関数を変分法に基づいて計算する新しい方法を提案し、簡単な模型でその有効性を示した後、最大エントロピー法によって得られた連続関数のスペクトル関数において、どの情報が信頼できるものかの
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Nf=2+1QCDの有限温度状態方程式の計算では、クォークが現実より重い場合の計算結果を投稿し、クォーク質量を軽くした場合に必要な、ベータ関数の研究に取りかかった。有限密度相構造の研究も順調に進んでおり、化学ポテンシャルを大きくしたときの1次相転移の初めての兆候を示せる可能性が見えてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、我々が開発したT-integration法とヒストグラム法を用いて、改良Wilson型クォークによるQCDの有限温度・有限密度相構造の解明を行う。平成20年度に開発したT-integration法は、様々な温度のシミュレーションを、一つの格子スケールで実行する方法で、計算時間を抑えつつ、精度の高い有限温度計算を遂行する道を拓いている。平成21~23年度は、udクォークが現実より重い場合に、wilson型クォークとして初めてNF=2+1QCDの状態方程式を計算し、論文を投稿中した。平成24年度には、格子間隔を変えた計算と、ベータ関数のより精度の高い評価を実行し、連続極限への外挿を試みる。その進捗に応じて、クォークを軽くして、現実的なクォーク質量に近づけた場合の研究を開始したい。また、平成21~22年度に開発したヒストグラム法をT-integration法と組み合わせて、Nf=2+1有限密度QCDの相構造を研究し、特に、1次相転移がどこでおこるかを明らかにすることを目指して、研究を進める。
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Research Products
(31 results)