Research Abstract |
本年度は銀河系宇宙線の中でも,我々の住む太陽系近傍の宇宙線について詳細な研究を行った.中銀緯における,星間物質と宇宙線の反応で生じる広がったガンマ線の解析から,太陽系近傍(1kpc程度)の平均的な宇宙線のスペクトルおよび強度が,地球で直接測られた物に類似していることを明らかにした.この研究は執筆責任者として,投稿論文(Abdo et a1. 2009, ApJ 703, 1249)にまとめた.この論文は,その後に出版された大マゼラン雲からのガンマ線放射で比較対象にされるなど,科学的な重要性も高い.またFermi衛星チームの中で,広がったガンマ線を研究するサブグループ内での最初に出版された査読付き論文でもあり,日本グループの力を示すことにもつながった. この成果の上にたち,以下の2つを主目標にした研究も進めた.(1)太陽系近傍の巨大分子雲からのガンマ線放射の解析を行い,近傍宇宙線スペクトルの一様性(もしくは非一様性)と物質分布を明らかにする.(2)銀河面からの広がったガンマ線放射の解析により,銀河系スケールでの宇宙線スペクトルと強度分布を議論する.このうち(1)は大学院生を指導しつつ進めており,(2)は密接な国際協力による研究である.得られた結果のうち公表可能な物は国内外の学会で適宜発表・議論してきており,また平成22年度中に投稿論文にまとめる予定である.関連研究全体では,直接指導を行った大学院生によるもの2件を含む,都合9件の学会発表を行った. (うち口頭発表8件,国際会議3件,招待講演3件)
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