2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21340096
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
大熊 哲 Tokyo Institute of Technology, 極低温物性研究センター, 准教授 (50194105)
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Keywords | 第2種超伝導体 / 渦糸 / 動的秩序化 / 融解転移 / 共鳴現象 / 渦糸相図 / 量子ゆらぎ / アモルファス膜 |
Research Abstract |
まず,ミクロな乱れと高い抵抗率をもつ厚いアモルファスMo_xGe_<1-x>膜を,スパッタリング法により作成した。高い抵抗率は強い量子ゆらぎを得るために必要となる。この試料に対して,10MHz迄の周波域におけるモードロック共鳴を中心とする輸送測定を行った。モードロック法を用いることにより,'渦糸系を高速でフローさせ,ピン止めの影響を排除した状況での渦糸固体格子系の固有の融解転移を観測すること'が可能となる。これを動的融解という。これまでは高温域の測定しかなかったが,本研究により測定最低温度である0.8Kの低温域迄,動的融解転移の観測に成功した。以下の事実を明らかにした。 (1) 高温域では動的融解磁場と(ピン止めの影響を受けた従来の)静的融解磁場はほぼ一致する。 (2) これに対し,超伝導転移温度の30%程度以下の低温域になると動的融解磁場の温度依存性は急激に失われ,静的融解磁場より大きく減少する。こうして温度-場相図上で得られた動的融解線は,量子ゆらぎに起因する真の量子融解線に対応すると考えられる。この結果は,過去の理論的予測ともほぼ一致する。 (3) 絶対零度の極限では,磁場軸上で,動的融解磁場と静的融解磁場とに挟まれた磁場領域が現れる。この領域は,'静的には渦糸固体相であるがフローさせると量子液体状態になる'新しい磁場領域である。 以上のように,渦糸固体格子系の固有の(真の)量子融解転移-動的量子融解-を世界に先駆け捉えることに成功した。この成果は,2次元系の磁場誘起超伝導絶縁体転移を渦糸の量子融解の観点から理解するという,新たな理解にもつながるものと期待される。
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