2011 Fiscal Year Annual Research Report
摩擦発熱による粘土鉱物の脱水が地震すべりに与える効果の解明
Project/Area Number |
21340150
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
氏家 恒太郎 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (40359188)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堤 昭人 京都大学, 理学研究科, 助教 (90324607)
平野 伸夫 東北大学, 環境科学研究科, 助教 (80344688)
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Keywords | 粘土質断層ガウジ / 高速摩擦実験 / 摩擦発熱 / 断層流動化 |
Research Abstract |
本研究の目的は、断層浅部の主要構成物である粘土質断層ガウジの高速摩擦実験と微細構造解析を実施して、摩擦発熱による粘土鉱物の脱水が地震すべりに与える効果を明らかにすると同時に、それに特有の地質学的証拠を確立することであった。 高速摩擦実験の結果、無水条件で粘土質断層ガウジを高速ですべらせると、摩擦発熱による粘土鉱物の脱水が引き起こされ、流体圧上昇を引き起こし、摩擦強度を大きく引き下げることが実証された。一方、含水条件下で粘土質断層ガウジを高速ですべらせると、摩擦発熱が抑制されるため粘土鉱物の脱水は起こらず、断層ガウジが流体のように振る舞って(流動化)、摩擦強度を引き下げることが実証された。これらの結果から、地震時の断層浅部破壊は断層ガウジの高速摩擦特性に依存しており、地震時に粘土鉱物の脱水や断層ガウジの流動化が起これば、断層はすべりやすくなることが実証された。また、無水より含水状態の方が断層強度低下に要するエネルギーは小さく、地震破壊はより伝播しやすくなることも明らかになった。 微細構造解析の結果、火山豆石様構造と逆級化構造が見出された。前者は、摩擦発熱による温度上昇量が大きく、摩擦強度が低下するほど、断層ガウジに占める割合が増加することが明らかになった。一方、後者は、断層ガウジが高速で流勲化した場合のみ形成されることが明らかとなった。これらの結果から、火山豆石様構造と逆級化構造はそれぞれ摩擦発熱と高速すべりの地質学的指標となり得ることが実証された。 総括すると、本研究成果で得られた成果は、津波を引き起こすような断層浅部地震破壊を実証論的に解明したと同時に、地震すべりの新たな地質学的指標を見出すことに成功したといえる。
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