2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
21350004
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
美齊津 文典 東北大学, 大学院・理学研究科, 教授 (20219611)
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Keywords | クラスター / イオン移動度 / 異性体 / 質量分析 / 飛行時間型質量分析計 / レーザー分光 |
Research Abstract |
本研究では、イオン移動度分析法によるクラスターやナノ粒子イオンの異性体分離高感度分析分光のための装置と技術の確立を目指している。これによって、未踏領域であるサブナノメートル領域の化学種の構造特異的な物性を、特定のサイズごとに明らかにすることができ、新規な触媒や分子素子の開発につながる基礎的知見が得られると期待される。 具体的な計画として、タンデム反射型飛行時間質量分析計と負イオン光電子分光装置の開発の二本立てで研究を進めてきた。このうち、タンデム反射型分析計は前年度までに設計・製作、組立、信号強度の最適化、予備測定を完了している。今年度は本測定を続行した。特にサイズ・異性体分離された炭素クラスターイオン、ケイ素クラスターイオンの光解離と衝突誘起解離、および酸素分子・重水素分子の付加反応実験を行い、従来にない新たな知見を得ることに成功した。これらの結果は、いくつかの国内・国際会議で報告し、論文発表も進んでいる。さらに、複合系クラスターイオンとして、酸化亜鉛クラスターイオンのサイズ成長に伴う構造変化を観測することに成功した。また、負イオン光電子エネルギー分析器についても、設計・製作を完了した。現在の完成した装置によるクラスターイオンの異性体選択実験では、より精度を高めたイオン飛行軸調整とイオン信号S/N比の飛躍的向上、ドリフトセルの精密温度制御の結果、従来の結果に比べて格段に高い検出感度となることを検証することができ、信頼度の高い実験データを得ることができた。本研究で実施した異性体分離分光は現状では世界で唯一のものであり、今後はこのリードを保ったまま種々の分子・クラスター系に展開していく予定である。
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