2010 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質・溶媒場における化学反応の自由エネルギー面
Project/Area Number |
21350010
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
山本 武志 京都大学, 理学研究科, 助教 (30397583)
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Keywords | QM・MM法 / 酵素反応 / 触媒 / 励起状態 / 溶媒内反応 |
Research Abstract |
酵素反応をはじめとする生体内反応や溶液内での化学反応の機構とダイナミクスを解明することは、現在の理論化学研究の最も重要な課題の一つである。これら凝集系における化学反応を取り扱うには、反応場としての溶媒やタンパク質の熱揺らぎについて統計平均を取った自由エネルギー曲面に基づく解析が不可欠である。また、反応ダイナミクスや非断熱遷移を取り扱うためには、環境の非平衡な応答を記述するための方法も必要になる。本年度は、これらの方法論の開発と応用を前年度に引き続き行った。具体的には、calcone isomeraseの反応機構をQM/MM線形応答自由エネルギー法に基づいて研究した。また溶液中塩基分子(チミン)の円錐交差を経由する電子緩和ダイナミクスをabinitio非平衡自由エネルギー計算によって解析した。さらに、溶液中ユビキノール・ビタミン錯体におけるプロトン・電子移動反応を3D-RISM-SCF法によって調べ、非常に大きなトンネル効果があることを明らかにした。これらの結果は投稿準備中である。一方で、溶液反応の時間依存ダイナミクスをRISM-SCF法によって記述するための新規な方法(solution reaction space Hamiltonian)を開発し、フェノール・アミン系に応用した(青野ら、JCP2010,JCC2010)。また、レチナールシッフ塩基の溶液中における円錐交差を非平衡自由エネルギー面に基づいて調べた(森ら、JCP2010)。励起状態反応については、azaindole 2量体の高精度な解析的ポテンシャル面を構築しダイナミクス計算を行った(安藤ら、PCCP2010)。さらに、ミオグロビンタンパクにおけるリガンドの解離ダイナミクスとタンパク質の集団的な運動のカップリングについて解析を行った(西原ら、Biophys.J,2010)。
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