2011 Fiscal Year Annual Research Report
微視的有機反応系としてのイオン・分子反応ダイナミクスの研究
Project/Area Number |
21350017
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高口 博志 広島大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (40311188)
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Keywords | 化学物理 / 原子・分子物理 / 化学反応動力学 |
Research Abstract |
本年度は、本研究課題の主要項目である量子状態と衝突エネルギーを制御したイオン分子ビーム源と、RFイオンガイド法を用いた反応実験装置を完成させた。また、完成したイオン・分子反応実験を適用する多原子イオン分子種として、メチルラジカルイオン(CHI_3^+)、アリルラジカルイオン(C_3H_5^+)の状態選別ビーム生成法を確立した。NO^+イオンを用いた反応実験装置の開発では、前年度までに問題点が見出されたイオン光学系および8重極イオンガイドのRF電極条件を改良することにより、1eVまでの低並進エネルギーを持つイオンを1000mmの経路にわたり効率よくガイド・検出するシステムを実現させた。特に並進エネルギーを3eV以上に設定した場合、RFガイドによる反応分子イオンの検出器までの輸送効率として、ほぼ100%が達成された。反応実験における衝突エネルギー分解能は、低エネルギー領域の3eVにおいてもΔE/E<5%が達成され、未知のイオン・分子反応機構を検出して動力学的に考察することができる。反応実験装置の開発と並行して進めた量子状態選別イオン種の生成法開拓では、光イオン化画像観測法による解離反応の散乱分布測定の結果を踏まえて、パルス放電法と紫外レーザー光解離法を共鳴多光子イオン化法と組み合わせることにより、CH_3^+とC_3H_5^+の副生成物のない高純度発生法を確立した。いずれもRFガイド法による反応実験装置への適用に十分なイオンビーム強度が得られている。CH_3^+はCH対称伸縮モードと面外変角振動モードの励起状態が選択可能であり、C_3H_5^+は複数の炭素骨格振動モードの励起状態を幅広く選択することができる。本研究計画の目標とした有機反応論の検証に向けて、必要とされる低エネルギー領域での高分解能化された有機イオン分子ビーム反応性散乱実験装置を開発し、新しい知見を得る研究段階に移行するに至った。
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