2010 Fiscal Year Annual Research Report
電荷移動系ナノコンポジットの電子精密制御による導電性分子磁石の開発
Project/Area Number |
21350032
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
宮坂 等 東北大学, 大学院・理学研究科, 准教授 (50332937)
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Keywords | 電荷移動 / ナノコンポジット / 導電性分子磁石 / 電子供与体 / 電子受容体 |
Research Abstract |
IV)2:1型ナノコンポジットの孤立分子系の設計 配位受容サイトが非対称の[Ru_2^<II,II>]錯体[Ru_2^<II,II>(o-chp)_4(THF)](o-chp=6-chloro-2-hydroxypridinate)を用い、TCNQF_4との反応を行ったところ、電荷移動を起こした[Ru_2^<II,III>(o-chp)_4(THF)](TCNQF_4)_<1.5>という孤立分子系を得ることに成功した。この化合物は高温下THFを除くことにより、TCNQF_4が酸素化されたDCTCF_4^-(=tetrafluorodicyano-p-toluoylcyanide)が配位した錯体に変換されることが明らかとなった。新たな酸化還元反応系として興味深い。さらに、アニス酸塩の[Ru_2^<II,II>]とクロラニル(QCl_4)を反応させることにより、dimer-of-dimers型の孤立分子を合成することに成功した。この化合物では、それぞれのユニットの酸化還元能とHOMO-LUMOエネルギーレベルから理解できるように、2つの[Ru_2]ユニットは、[Ru_2^<II,III>]^+になっており、QCl_4は二電子還元されたヒドロキノン型になっている。磁性は、二電子移動型のポリマー錯体のそれをよく説明している。 V)二次元磁性層間における導電性発現を目指した分子設計(分子挿入) 二つの合成戦略により分子を設計した。一つは、D_2A型二次元電荷移動錯体の層間に電子的に影響する新たな分子を挿入する方法、二つ目は、D_nA型格子を直接スタックさせて、格子間に伝導層を構築する方法である。前者の方法では、挿入分子が格子を形成するAユニットのLUMOレベルに影響し、格子内電荷移動を阻害するという極めて興味ある結果を得た。後者では、スタック型一次元鎖化合物を設計した。一次元鎖の鎖方向で超交換相互作用によりスピンが配列し、その鎖間のスタックを介して電子輸送がかんそくされるという新しい分子系を発表するに至った。
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