2011 Fiscal Year Annual Research Report
超分子ヘムタンパク質モデルによる二原子分子の捕捉とその医薬品化学への応用
Project/Area Number |
21350097
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
加納 航治 同志社大学, 理工学部, 教授 (60038031)
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Keywords | シクロデキストリン二量体 / 鉄ポルフィリン / 青酸中毒解毒作用 / ヒドロキソコバラミン / イミダゾール配位 / 動物実験 / 血清タンパク質 / 超分子化学 |
Research Abstract |
これまでに、アニオン性鉄ポルフィリン(FeTPPS)とパーメチル化β-シクロデキストリン二量体(hemoCD)との包接錯体が、酸素、一酸化炭素あるいはまた一酸化窒素を可逆的に捕捉し、これまでにないヘモグロビン(Hb)あるいはミオグロビン(Mb)モデルとして機能することを明らかにしてきた。hemoCDは基本的にHbやMbと同じ機能を発揮するため、人工の酸素運搬体や一酸化炭素除去剤としての作用があることが分かっている。2011年度は新たに、青酸中毒解毒作用のある超分子の開発を試みた。青酸アニオン(CN^-)は鉄(III)ポルフィリンに結合する性質がある。そのため我が国では、青酸中毒解毒は、Hbを亜硝酸アミルで一部酸化してFe(III)のmet-Hbとし、この酸化型Hbへの青酸アニオンの配位を利用して行っている。しかしこの方法は大きな危険性を含んでおり望ましい方法とは言えない。一方、ヒドロキソコバラミン(ビタミンB_<12>)を用いる方法も開発されている。我々は、まずmet-hemoCDと青酸アニオンとの結合について詳細に検討した。フラスコ内ではmet-hemoCDはCN^-と強く結合するが、ラットの血液中ではmet-hemoCDは生体内にある還元剤によりhemoCDとなりCN^-結合能が消失し、代わって内因性一酸化炭素を捕捉して尿中に排出されることが明らかとなった。そこで、新たなCN^-捕捉超分子として、イミダゾールをリンカー中央部に有し、2つのシクロデキストリン単位がアミド結合で結ばれたシクロデキストリン二量体(1m3CD)のFe(III)TPPS錯体を用いた。この超分子は血液中でも還元されず、かつCN^-結合能はmet-hemoCDよりも優れていた。ビタミンB_<12>は解毒剤として血中に投与されると血清タンパク質に取り込まれCN^-結合能が著しく減少するが、Fe(III)TPPS/Im3CDの血清タンパク質との結合は非常に弱く、血液中でもCN^-捕捉能の著しい低下は認められなかった。さらに、CN^-を捕捉したFe(III)TPPS/Im3CDは速やかに尿中へ排出されるため、血清タンパク質と結合することにより長時間体内に留まるビタミンB_<12>よりも、解毒剤としての優れた性能を保有していることが分かった。
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