Research Abstract |
真空中のアーク放電プラズマを用いた機能性薄膜蒸着装置に関し異種元素をドープする機能を備え,かつ高品質(超平坦,均一,異物フリー)な薄膜を形成可能な新規のフィルタードアーク蒸発システムを設計・開発し,装置機能を評価するとともに,異種元素ドープ・機能性高密度アモルファス炭素膜(機能性DLC膜)を創製する。今年度の成果は次のとおりである。 (1)装置の設計・製作および評価:ターボ分子ポンプ/クライオポンプ併用排気ラインを有し,ベーキングヒータを内臓させた高真空成膜チャンバを設計・構築した。真空到達圧力は目標とした10-5Pa台であることを確認した。アークモジュールについて,自動メカニカルトリガ機構および陰極回転導入機構を有した新型モジュールを設計・開発した。プラズマ輸送用電磁コイルのチューニングを行い,目標とした数百mAのイオン電流を得る条件を見出した。その後,1時間の連続運転を行い,熱的問題や圧力上昇などの不具合がないことを確認した。ドープ用蒸発源について,成膜チャンバへの導入機構の設計を行った。 (2)DLC膜の評価:密度を変化させたDLCおよび水素を含有させたDLCを形成し,膜厚と色変化との関係を把握し,光学定数(屈折率,消衰係数)を求めた。その結果,密度が高いほど,ダイヤモンドの屈折率に近づくことを明らかにした。また,高真空でDLCを形成したところ,84GPaという極めて高い硬度を有することを明らかにした。 (3)窒素導入用プラズマガン:異種元素として窒素を導入するため,熱フィラメントを陰極とし,基盤に熱損傷を与えないため,放電軸方向にプラズマを引き出す方式のプラズマガンを考案し,設計・製作を行い,特性を評価した。その結果,磁界分布・強度およびフィラメント温度を調整することで,フィルタードアークで得られるイオン電流と同等のイオン電流を得られることを確認した。
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